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サモアを押し込んだ歴史的スクラム。
ヒーローはいない、ONE TEAMだ。 

text by

多羅正崇

多羅正崇Masataka Tara

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photograph byNaoya Sanuki

posted2019/10/06 12:20

サモアを押し込んだ歴史的スクラム。ヒーローはいない、ONE TEAMだ。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

サモアに押し勝ち、常に走る。この日のジャパンフォワード陣は凄まじかった。

姫野の突進、そして最後は松島。

 そのときだった。NO8姫野がボールを拾い上げ、左サイドへ突進した。いわゆるエイトサイドだ。

「フミさん(田中史朗)に『出せ』と言われました。もともとスクラムも優位でしたし、ボールの確保が大事です」

 百戦錬磨の田中史朗の直感が働いた。ボールを奪われる前に、姫野に突進させる。

 このエイトサイドに最初に反応したのは、左フランカーに入った途中出場のツイ ヘンドリック。他のフォワード6人はまだスクラムを押しており、結果的に相手FWのバッキングは遅れた。慌てて松田力也もラックに駆け寄った。

 田中史朗が左サイドで配球する。松島幸太朗がゴール前で1対1になった時点で有利だった。瞬発力で、フェラーリが間隙を切り裂いた。

ヒーローではなく、チームで。

 スローガンに「ONE TEAM(ワンチーム)」を掲げる日本代表の指揮官は、歴史的な開幕3連勝をこう振り返っていた。

「1人の選手が何をしたということではなく、チーム全体でフォーカスした結果だと思う」

 ヒーローはいない。この日W杯初先発を果たしたフッカーの坂手淳史が明かしていた。

 サモア戦へ向けたスクラム練習では、出場しないプロップの木津悠輔、フッカーの北出卓也らが“仮想サモア”となり、出場メンバーの練習台をしてくれた。歴史的金星を挙げたアイルランド戦の準備でも同様だった。

 歴史的な開幕3連勝、歴史的なスクラムは、出場メンバーだけで成し遂げたものではなかった。創り上げたのはONE TEAMだった。

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