月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
ラグビーW杯で沸き立つスポーツ紙。
奇跡報じるデイリーの一面には……。
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph bySports Graphic Number
posted2019/09/30 17:00
アイルランド戦翌日はラグビー1色だったスポーツ各紙。その中で阪神・西の姿は際立っていた。
「オ~ノーノー」「長嶋超えセ界一」
悲劇はさらに。まず東京中日スポーツの一面を見てほしい。
「ノーヒットノーラン 大野雄 どん底昨季0勝から鮮やか復活」(9月15日)
中日の大野雄大投手が14日の阪神戦で快挙達成。トーチュウは大興奮。ということはデイリースポーツは……
「矢野虎 オ~ノーノー」(デイリー9月15日)
大野とノーノー。またしても百点の見出しを叩き出したデイリー。悲劇があると良いダジャレが出る模様。
このまま終わるかと思いきや、9月の後半からアゲてきた阪神。何といってもこのルーキーだ。
「61年ぶりセ界新 近本154H ミスター越え!!」(サンスポ大阪版9月20日)
「虎の誇り 長嶋超えセ界一 近本154H」(デイリー9月20日)
阪神のドラフト1位・近本光司外野手が1958年に長嶋茂雄が作ったセ・リーグ新人安打記録を61年ぶりに塗り替えた。阪神推しのスポーツ紙はチームの成績のことは忘れ、近本一本に絞って楽しんでいた。
しかしチームも少しずつ勝ちだす。気が付けば「矢野生き残った」(デイリー9月25日)、「自力CS復活」(デイリー9月28日)。
そして月末にはラグビーW杯に負けない奇跡祭りとなったのである。
息づかいが伝わる時代。
今月は巨人と西武が優勝を果たして劇的な各記事は当然読みごたえがあったのだが、ついつい阪神の「喜怒哀楽」に目を奪われてしまった。ただ弱いときもあれば急に強いときがあるからだ。だからこそ4位なのだが、CS出場権という摩訶不思議があるとその生々しい実力が見ていて面白い。
あと、「ご当地」の息づかいがわかる素晴らしさ。新聞も電子版なら東京にいても大阪版を読める。
先ほど引用したサンスポ大阪版コラムに「東北では、西武のリーグ優勝より、楽天のCS進出が最大の関心事になっていた」とあったが、ラジコプレミアムのサービスを利用すれば各球団の本拠地の中継を全国どこでも堪能できる現在。
何か大きなニュースがあったときに「デイリーの一面は阪神!」というのは今まではネタ的な楽しみだった。しかし「それぞれの地域ではこんな盛り上がってるのか」とスポーツ紙やラジオで現場体験できる。多様な熱狂が味わえる。いろんな視点を楽しめる良い時代だと思う。
それにしてもクライマックスシリーズはどこが勝ちあがるのか予測不能。
本当に摩訶不思議な10月がそろそろやってくる。