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高野連が示した球数制限の新規定、
「1週間で500球」は問題ないのか?
 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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posted2019/09/27 18:00

高野連が示した球数制限の新規定、「1週間で500球」は問題ないのか?<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

去年の夏の甲子園決勝で試合を終え握手を交わす大阪桐蔭と金足農業のナイン。吉田輝星(中央)の球数は新規定では引っかかっていた。

吉田輝星の場合、新規定では引っかかる。

 吉田は甲子園大会に入って1回戦の鹿児島実業戦で157球。中5日の2回戦、大垣日大戦で154球を投げ、中2日の横浜戦で164球を投げた。ここまで10日間で475球と規定をクリアしている。そこから連投で準々決勝の近江戦で140球、中1日の準決勝日大三戦で134球ときて、最後も連投の決勝、大阪桐蔭戦で132球を投げている。

 大垣戦から準々決勝の近江戦までで球数は458球。大垣日大戦からは6日目の日大三戦の途中で500球に到達することになる。また横浜戦から数えると決勝の大阪桐蔭戦まで5日間で球数は570球となった。さすがにこちらも新規定では引っかかる。

 ただあれだけ投げ、疲労困憊でも決勝のマウンドに上がった時点では、横浜戦から5日間で438球だった。制限が500球ならまだ62球も投げることができたのである。

なぜ1試合ではなく1週間というスパンなのか。

 果たしてこれが選手の投げ過ぎを予防できる規定なのかには、はなはだ疑問が残るところだ。簡単にいえば中1日で150球を3試合投げることも可能になる。1試合での制限がないために200球でも300球でも投げることができる。投手の障害予防という点では1週間で500球という制限が、ほとんどザル規定でしかないことは明白なのである。

 1試合ではなく、1週間というスパンでの制限にした理由を「現場の自由度が高く、投げたいという投手の気持ちも尊重できるから」と中島座長は説明した。また渡辺元智委員(前横浜高校野球部監督)は「(1週間で500球は)現時点では理想ではないかな。投手が1人しかいないところは少し不安だが、いろいろな意味で高校野球が変わっていくことはいいことだと思う」と1人のエースに頼る公立校などが不利にならないという観点から、今回の決定を評価している。

 その一方で冷静にこの数字を見ているメンバーの口からは、数字への評価ではなく、制限を決めたという事実に価値があるという声がもっぱらだ。

【次ページ】 投げさせすぎのブレーキとなるか。

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吉田輝星
金足農業高校

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