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球場に自衛隊を呼ぶことはできるか。
メジャーと軍隊の関係から考える。 

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ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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posted2019/09/23 19:00

球場に自衛隊を呼ぶことはできるか。メジャーと軍隊の関係から考える。<Number Web> photograph by Getty Images

アメリカにおいて、軍隊に敬意を払うのは共和党・民主党問わず絶対の文化的前提なのである。

自然災害の支援活動でも軍関係者が招待。

 最近になって、その理由の1つは、アメリカが軍事大国であると同時に自然災害の多い国でもあるからではないかと思うようになった。

 なぜなら、大西洋やメキシコ湾岸のハリケーン、中西部のトルネード(竜巻)、西海岸の大規模な山火事……等々。アメリカでは日本での地震や台風に匹敵するほど自然災害が頻繁に起こり、軍関係者が非常事態における「任務」を遂行する機会が多いからだ。

 そして、そんな時、アメリカのプロ野球はとても迅速に、彼らのように「被災地で支援活動を行う人々」を観客の前で紹介し、「Recognition=認識」させるようなセレモニーを開く。

 たとえば2017年、テキサス州ヒューストンで大規模なハリケーン被害が出た時も、ホームでの試合前、支援活動を行った軍関係者(もちろん、地元警察や消防の人々も)が本拠地球場に招待された。

「ヒューストンや他の近隣地域で支援活動を行っている人々に、それをほんの一瞬でも忘れて、このゲームを楽しんで頂ければと思います」

 アストロズのA.J.ヒンチ監督は、当時そう言って「被災地で支援活動を行う人々」を励ました。

立場上、支援活動のアピールはしづらい。

 この「Recognition=認識」というのは、とても大事なことではないかと思う。

 なぜなら、軍隊、警察、消防関係者にとっての支援活動は「任務」の一部であり、ボランティア活動ではないからだ。

 彼らは立場上、決して自ら「支援活動を行っています」などとアピールすることはないし、彼らが被災地で行っていることを誰かが世間に広く「Recognition=認識」させることがなければ、「支援活動なんて、当たり前でしょ」で終わってしまう。

 そういった人々にスポットライトを当てることは彼らにとっての励みになるし、彼ら自身も誇りに思えるのではないか。メジャーリーグ=アメリカのプロ野球がやっていることは、そういうことだと思う。

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