来た、見た、書いたBACK NUMBER
失い始めたガンバ常勝の記憶。
ルヴァン杯でイズム継承なるか。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/09/18 11:30
この夏、チームに復帰した宇佐美貴史(右)とパトリック。三冠を知る男たちの奮起に期待したい。
「三冠ホットライン」で準決勝へ。
キーワードはアウェイゴールだ。
「先に点を取られても、こっちが1点を取れば一気に優位になる」と遠藤保仁が言えば、パトリックも「この大会はアウェイゴールが大事になる。2ndレグで僕らは少なくとも1点を取る力はある」と断言していた。長谷川監督が率いた当時、ルヴァンカップでは3年連続で決勝に進出し、AFCアジアチャンピオンズリーグでも数々の修羅場をくぐって来た選手たちは、虎視眈々と敵地での「一刺し」を狙うのだ。
そして2失点目からわずか9分後、その時がやってきた。
遠藤の縦パスをきっかけに宇佐美貴史がゴール前にパーフェクトクロスを供給すると、パトリックが文字通りねじ込むようなヘディング弾を決め、貴重なアウェイゴールをゲットした。
いずれもこの夏の復帰組である宇佐美とパトリックによる「三冠ホットライン」の開通でFC東京を退けたガンバ大阪は、2年ぶりに準決勝への切符を掴み取った。選ばれし4チームの中で、アウェイゴールのアドバンテージを活かしたのはガンバ大阪のみ。お世辞にも完勝とは言い難い足取りだったが「ルヴァンカップは2試合合計で180分という考え方でいい。2試合を通じて勝ち上がることが大事」(遠藤)なのである。
闘志を燃やすパトリック、宇佐美。
うっすらとルヴァンカップの頂が視界に入って来たガンバ大阪だが、エベレスト登山のシェルパ(案内人)よろしく、チームを支えるパトリックは、世代交代が進むチームの現状を決して、楽観視はしていないのだ。
「僕が前回所属していた3年間は、どのシーズンも全てのタイトルを争っていた。今は若い選手が増えて、その選手たちがどこまで本気でタイトルを狙っているのか。ガンバはビッグクラブで常にタイトル争いをしないといけないし、僕自身も常にチームの皆にタイトルを狙っていこうと声をかけている。ガンバはそういうクラブだと、僕たちがきっちりと若い選手に教えていかないといけない」
FC東京戦でピッチに立った選手のうち、タイトル経験者は途中出場の宇佐美を含めて6人のみ。昨年夏から指揮する宮本恒靖監督にとっても、指揮官としてのタイトルには無縁で、優勝争いは未知の領域だ。パトリック以上に、強いガンバ大阪を見続けてきた宇佐美もまた、チームの復権に静かな闘志を燃やす男の1人である。
「個人的にはキャリアでタイトルに恵まれて来た。タイトルがチームに与えるものは大きい。記録にも残るし、メンタル的にもそう。クラブとして大きくなろうと思うなら、数多くのタイトルが必要になる」