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<ホッケー選手が見るさくらジャパン>
宇野昌磨の弟・樹が語るみどころ。
「代表は、細かな技術レベルがすごいんです」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byYuki Suenaga
posted2019/09/20 11:00
8月に行われた東京五輪のプレイベントで、強豪国相手にさくらジャパンは2位に食い込む。
オフサイドがないホッケー、FWの役割。
また、ホッケーのスティックは平らな片面でしかボールを扱えない。
「スティックの特性もあって、基本的には右サイドからのほうが攻めやすい。なので左サイドには守備がうまい選手を置くことが多いですね。守るときは足下を抜かれないように、スティックを下げて構えながら動くこともあります」
サッカーと比べると、オフサイドがないこともホッケーの特徴だ。FWのポジションを務める宇野は、その違いを肌身で知る。
「サッカーと比べてFWの移動距離が長いのでスタミナ面で大変なんです。ホッケーは全員が守備をします。しかも、相手ボールを奪ってカウンターのチャンスになると、オフサイドがないからFWは一気に相手ゴール前まで走っていくことを求められる。サッカーはオフサイドラインを気にしながら動くじゃないですか」
宇野が驚いたオーストラリアでの体験。
そんな宇野がホッケーへの認識をあらためる契機となったのは、中学3年生のときに留学したオーストラリア・パースでの体験だ。当地でもホッケーに打ち込んだ宇野は、日本との技術の違いを感じたという。
「ボールを止める動き、ボールを持っている相手の選手への詰めの速さ。基本の技術が全然、違いました」
何よりも実感したのは、男女ともに世界ランキングで上位に位置するオーストラリアでは、ホッケーが文化として生活にとけ込んでいるという環境の違いだった。
「ホームステイしていた家から自転車で15分くらいの範囲に、グラウンドが3つもあったんです。全部、ホッケー専用です。中学生・高校生でもリーグ戦があって、3部リーグまである。しかも中学、高校の試合でもたくさんのお客さんが来るんです。テレビでも試合の中継はよくありました。パースというホッケーの盛んな土地柄もあるのかもしれませんが、サッカーよりもメジャーなほどでした」
かたや、日本は、「例外を除けば、県に1つ、専用のグラウンドがあるかないかのイメージです」。
ホッケー部のある学校も少ない。だから試合数も少ないし、一般の認知度も高くはない。
「オーストラリアは、日本とぜんぜん違いました。戦術や戦略も教えてくれる指導者もいましたし」
その言葉には、実感がこもっていた。
在籍する高校ホッケー部で主将を務める宇野は、オーストラリアでの経験も踏まえ、戦術などの中心的存在として活躍している。
「オーストラリアで学んだ技術や戦術をチームに伝えています」