マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
甲子園から解放された表情が楽しい。
U-18で目を引いた西純矢の大器感。
posted2019/09/12 19:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
AFLO
7日、「U18ワールドカップ」は高校日本代表がスーパーラウンドのオーストラリア戦に1-4で敗れ、奮戦かなわず5位に終わった。
優勝は台湾が勝ち取ったが、勝ち負けはともかくとして、この大会は選手たちのいろいろな“表情”が見られて、とても興味深い。
少し前までは、「甲子園、甲子園!」、「全国制覇、全国制覇!」とひきつった表情でプレーしていた球児たちの顔から、せっぱ詰まったような毒気が抜けて、真摯に目の前の闘いだけに集中しようとする「アスリート」のまなざしを何度も見ることができたことが嬉しかった。
去年もそうだったが、選手たちは疲れていたと思う。
春からずっと……いや、3年生にしてみれば、3年間ずっと、甲子園、甲子園と念じるような高校野球生活を続け、最後の夏を迎えたこの7月、8月にそれぞれが野球の神さまから「答え」をもらって、それぞれの高校野球にピリオドを打ってきたはずだ。
達成感、失望感、喪失感……いろいろな思いの中で、一度は決着をつけた「高校野球」に再び気持ちを立て直して、この大会に参加するのだ。
甲子園の熱闘で疲弊した肉体もさぞしんどいだろうが、一度しぼんだ“思い”を再び奮い起こして、今度は気持ちを世界に向ける。それも並大抵のことではなかろう。
昨年の宮崎でのワールドカップでは、甲子園の時と同じ顔でプレーしていたのは、大阪桐蔭・根尾昂だけだった。
雨ばかりの気の毒なコンディションの中で、今年も奮戦した選手たち、スタッフの皆さんに、心から敬意を表したい。
チームの命運を託された西純矢。
チームの牽引車になると思われていた奥川恭伸(星稜)と佐々木朗希(大船渡)が、甲子園の疲れや指先の不具合のためにフル回転できない中、ジャパンの「投」を背負った西純矢(創志学園)の奮戦には頭が下がった。
13イニングと3分の1……チームでいちばんたくさん投げたのも西だが、勝負どころの最もしびれる場面でチームの命運を託されたのも、彼がいちばん多かったはずだ。
そのたび、世界のスラッガーたちを相手に敢然と立ち向かい、快速球で、鋭い変化球で三振を奪い、切り抜けてみせた。