甲子園の風BACK NUMBER
甲子園、高野連は悪者なのか。
米・高校野球事情を調べてみると……。
posted2019/09/16 11:00
text by
太田俊明Toshiaki Ota
photograph by
Hideki Sugiyama
大船渡・佐々木朗希投手の岩手県大会決勝での登板回避問題は、球界の大御所・張本勲と現役投手のオピニオンリーダー・ダルビッシュ有の応酬に代表されるように、軍隊調野球を生き抜いてきた高齢世代と、選手ファーストという世界の趨勢を知る若い世代の世代間論争の様相を呈している。
オールド世代の主張は、「故障を恐れていては、真の成長ができない。限界を超えたところで見えてくるものがある」、「チームの仲間や、これまで支えてくれた人たちのために投げるという姿勢が、共感と感動を呼ぶのだ」といったものだが、これはたとえ疲労困憊ではあっても、なんとか投げられる状態にあることが前提で、故障をおしてまで投げろとは、今の時代誰も言わなくなってきている。
かつて、別所毅彦が骨折した左腕を三角巾で吊って投げ続けたのを、「泣くな別所、甲子園の華」と日本中が讃えた感性は、もはや高齢世代にもない。
それでは、なぜ過酷過ぎるエースの連投がいまだに後を絶たないのか。
そこで台頭してきたのが、「甲子園悪者論」であり「高野連悪者論」だ。
批判にさらされている高野連。
過熱する甲子園人気。そこで勝つことを至上目標として、エース1人に過酷な連投を命じる指導者。ほとんどのレギュラーが県外からの野球留学生で占められる強豪校。話題性のあるチームや選手に群がるメディア。商業主義に染まった甲子園が、高校野球を歪め、選手たちを疲弊させているという批判だ。
高野連も批判にさらされている。球数制限を導入せよ。地方大会や甲子園大会の日程にゆとりを持たせて、エースの連投を避けるべきだ。高校生の打撃を歪めている当てれば飛ぶ金属バットを規制しろ、等々。
期待されながら、5位に終わったU18ワールドカップでも高野連は評判が悪い。遊撃手6人、外野手2人、一塁手と二塁手ゼロ、優勝した履正社からの代表ゼロ。高野連のこうした偏った選手選考が、肝心な場面での致命的な守備の破綻を招いたのだと。