マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
甲子園から解放された表情が楽しい。
U-18で目を引いた西純矢の大器感。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byAFLO
posted2019/09/12 19:00
西純矢の投球は、彼もまたドラフト1位候補であることを存分にアピールするものだった。
アメリカの上位打線を相手に堂々の投球。
中でも、1日のアメリカ戦のピッチングは見事だった。
先発・林優樹(近江)をリリーフして3回のマウンドに上がると、いきなりアメリカの1番・クローアームストロングを3球三振にきってとる。
相手は、向こうのドラフト1位候補らしかったが、西だって“こっち”のドラ1候補だ。ひるむこともなく猛烈に腕を振ると、左打者の足元のタテのスライダーでカウントをとり、一転、外の146キロで追い込んで、「3球勝負」のスプリットをボールゾーンの低さに沈め、あっさり3球三振だ。
2番の左打者・ハッセルに外の速球をものの見事にレフト前に弾き返されても、まあ、そんなこともあるだろう……ぐらいの表情で、3番・ブコビッチに低めのスライダーをひっかけさせてショートゴロに。
捕手は立ったのに、一転ストライク。
もっとすばらしかったのは、ここからだ。
4番・ソダーストロムは、188cmの左バッターだ。
全米の高校球児の中から選び抜かれたチームの4番をつとめるだけに、バッターボックスに足を運ぶその雰囲気から“メジャー”を感じさせる。
そんなオーラにも負けない西純矢の大和魂。
2球続けたスプリットがワッ! と思うほど真ん中に入っても、速球以上の猛烈な腕の振りだから、チェンジアップ効果になってソダーストロムのタイミングが外れ、バットを振り出せない。
あっという間に追い込むと、捕手・水上桂(明石商)が外にスッと立ち上がったから、1球外すかな……と思ったら、147キロの速球が受けた水上捕手のベルトの高さにきまって、ここも3球三振だ。
投げ間違ったら、あんな「生きたボール」にはならない。
サインは「外せ」だったかもしれないが、バッターが打つ気なしと見てとった投手・西純矢が、えーい、面倒だ! と、とっさにもう一度3球勝負に出たのだろう。
見事な若武者ぶり、投げっぷりだった。