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安部裕葵が語るバルサBでの充実感。
「エゴを出す」プレーを楽しんで。 

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林遼平

林遼平Ryohei Hayashi

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photograph byRyohei Hayashi

posted2019/09/06 20:00

安部裕葵が語るバルサBでの充実感。「エゴを出す」プレーを楽しんで。<Number Web> photograph by Ryohei Hayashi

バルサBでの練習試合でゴールしたことが話題になった安部裕葵。U-22日本代表でも活躍する姿が見たい。

バルサB選手の強い自己アピール。

「言葉がまだ分からないので、自分の状態をスタッフに伝えるのは難しい。チームメイトともコミュニケーションは取るけど、言葉ができないことには限界がある」

 こう話すように、やすやすと意思疎通が図れるわけはなく、これまでとは異なる環境や文化に身を置くことの難しさを肌で感じている。

 それは普段の生活だけでなくトレーニングも同様である。日本ではどちらかと言うと、個人よりもチームのためにプレーすることが優先される傾向にある。

 だが、バルセロナBではまずは個人のためにプレーする選手が多く、ひとりひとりが自分をアピールするために、何より結果を求めていた。

「チーム全員が“勝利のために”と考えるのはもちろんだけど、その上で自分のために動いているところが見える。例えば日本だったら、チームと個人に懸ける割合が9対1や8対2だとすれば、人によっては五分五分、むしろそれを越える人もいる。その辺りが違うなと感じます」

臆せずエゴを出して公式戦デビュー。

 ただ、考え方の違いに戸惑ったのかと言えば、そうではなかった。

「チームの全員がエゴを出そうとするので自分も出しやすい」と臆することなく自分らしいプレーを続け、1日にはセグンダB(3部)の第2節ジムナスティック・タラゴナ戦で公式戦デビューを果たした。周りとの連係こそまだまだだが、ドリブル突破など積極的なプレーを披露し、確かな一歩を踏み出している。

 刺激のある環境でトレーニングをこなしながら実戦経験を積み重ねる日々。異国でのプレーが半月も経てば、自分に必要なことがわかってきた。技術面を含めて、スペインでやれる能力があることは間違いないだけに、あとは「適応力」だと安部は言う。

「瀬戸内から鹿島に加入した際も、レベルの違いなど驚くことはたくさんあった。だけど、そこに食らいついていけるかどうかだし、いかに慣れるかだった。いろいろなチームに適応できる人もいれば、逆に特定のチームに合う人もいる。それぞれのプレースタイルがある中で、うまく自分に合う選択ができれば成功すると思います」

 この言葉から分かるのは、安部が海外で必要なものを、技術以上に「メンタル」だと捉えていることだ。適応するために、良い意味でいかに自分を変化させるか。難しくもやりがいのある作業を進めている段階なのだ。

【次ページ】 2年半前には想像しなかった現実。

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