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世界柔道、金メダル4をどう見る?
日本陣営は「悲観していない」。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2019/09/05 20:00
混合団体に臨んだ大野将平、芳田司(右前)と新井千鶴。五輪に向けて日本柔道勢は男女ともに進化する必要がある。
丸山、素根の金メダルが持つ価値。
男女を問わず、必死さを生む根源は、選手個々に事情が異なるだろう。ただ多くの選手は、五輪前年の大舞台であること、つまりはオリンピックへの切符を手にしたいという気迫にあったのではないか。
そういう意味で、阿部一二三との熾烈な争いにある男子66kg級の丸山城志郎、朝比奈沙羅を追い続けてきた女子78kg超級の素根輝の金メダルは、意味のあるものだ。
別の見方をすれば、あと一歩のところで優勝に届かなかった日本勢にとっては、次へ向けての糧を得たことにもなる。
女子63kg級の田代未来は昨年の決勝の雪辱を期して挑んだものの、昨年と同じ相手に敗れはした。それでも試合時間11分を超える熱戦を繰り広げ、昨年より差を縮めた。
そして78kg級で連覇を果たせず銀メダルに終わった濱田尚里も、翌々日の団体戦で意地を見せた。本来出場する予定だった選手のコンディション不調により急きょ出場することになったが、堂々とした試合運びで団体金メダルに貢献している。個人戦の悔しさをばねにした結果だった。
今回出場し、思うような結果を残せなかった他の選手、代表に選ばれず見守るしかなかった選手、誰もが、大会を通じて何がしかの刺激を得たはずだ。
それを生かせるかどうかが代表争い、そして来年のオリンピックでの成績につながる。
世界の厳しさを実感しつつも、そういう意味では、収穫も少なからずあった世界選手権だった。