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世界柔道、金メダル4をどう見る?
日本陣営は「悲観していない」。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2019/09/05 20:00
混合団体に臨んだ大野将平、芳田司(右前)と新井千鶴。五輪に向けて日本柔道勢は男女ともに進化する必要がある。
山下会長「研究されている」。
全日本柔道連盟・山下泰裕会長はこう語る。
「よく研究されていて少し苦戦している、柔道をさせてくれない。そんな印象を持ちました。どうやって日本人選手に柔道をさせないで戦いを続けていくか、かなり研究しています」
その言葉通り、研究で海外勢が上回ったことが、紙一重の中で後れをとった面もあるだろう。
また、大会全般を通じてうかがえたのは、五輪前年の大会であるからこその、気迫だった。その前提には、技術や日々の練習の積み重ねがあるのはいうまでもない。
気迫の重要性を感じさせた戦いとしてが、初日の男子60kg級が象徴的だった。
世界選手権では、各階級の代表枠が各国1名に限られるのと異なり、2つの階級は、1国あたり2人の選手を出場させることができる。60kg級で準決勝に勝ち上がったのは、2枠を用いた国の代表選手だった。しかも、それぞれの国で競争がきわめて厳しい、あるいは「2番手」と目される選手たちが進出したのだ。
3連覇を狙った新井に立ちはだかった壁。
女子70kg級では世界選手権3連覇を目指した新井千鶴が3回戦で敗れた。この結果は波乱と言ってよかった。
相手はバルバラ・ティモ。ブラジルの実力者として長年、国際大会に出場し、上位進出を果たしたこともある選手だが、オリンピックには縁がなかった。同国には彼女を凌駕する第一人者がいたからだ。
そこで今年に入り、ティモはポルトガルに国籍を移した。自身の可能性を追い求める、広げるためだったのだろう。そんなティモに対して新井は試合開始早々技ありを奪われ、それが決定打となり敗れた。
この結果は立ち上がりから勝負をかけてきたティモの姿勢あればこそであり、長年2番手であった立場から、環境を変えて臨んだ覚悟がそこにあった。