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ガンバで発展途上の食野がマンCへ。
Jを揺るがす黒船の資金力と情報網。 

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下薗昌記

下薗昌記Masaki Shimozono

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posted2019/09/02 11:30

ガンバで発展途上の食野がマンCへ。Jを揺るがす黒船の資金力と情報網。<Number Web> photograph by Getty Images

まだ「期待の若手」クラスだった食野亮太郎すら徹底的に把握する。マンCの世界戦略はJリーグにも影響を及ぼしている。

松波強化部長が明かした本音。

 ガンバ大阪がジュニアユース時代から手塩にかけて育ててきた俊英は、プロ3年目の今シーズン、ブレークの気配を見せていた。

 近い将来、主力として活躍することを期待されていた生え抜きを失うことになったクラブにとって、今回の移籍劇は「黒船襲来」に似たインパクトを与えるものだった。

「亮太郎の一件は想定外。これから台頭してくれるというところでの移籍だったので、クラブとしては痛い」

 こう本音を明かすのは松波正信強化部長である。

 Jリーグにおける選手育成の先駆者でもあるガンバ大阪のユースで育ち、トップデビューを経て欧州クラブに移籍したのは食野を含めると計9人。アーセナルに渡った稲本潤一を皮切りに、現監督の宮本恒靖(ザルツブルク)や安田理大(フィテッセ)、宇佐美貴史(バイエルン)らが海外に羽ばたいた。

 彼らに共通するのはトップチームで活躍した後、日本代表に登り詰めていることだ。

 唯一、移籍の時点で、日本代表の肩書きを持っていなかったのは2017年、フローニンゲンに旅立った堂安律だが、堂安はU-20ワールドカップでその存在を世界にアピール済み。ガンバ大阪でレギュラーでもなく、世代別代表の経験もなかった食野は、クラブにとってまさに「想定外」の移籍例となった。

「黒船」が日本を狙っている。

 ただ、「黒船」がやって来るのには確かな理由が存在する。

 あくまでも欧州サッカー界に詳しい関係者からの伝聞、と断った上で松波強化部長は言う。

「アフリカからの獲得が頭打ちになってきたという中で、アジアのマーケットが注目されている、その中でも日本が注目されていると聞いている。クラブとしてのリスクマネージメントも考えていかないといかない」

【次ページ】 シティにとっては育成の選手。

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