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ガンバで発展途上の食野がマンCへ。
Jを揺るがす黒船の資金力と情報網。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byGetty Images
posted2019/09/02 11:30
まだ「期待の若手」クラスだった食野亮太郎すら徹底的に把握する。マンCの世界戦略はJリーグにも影響を及ぼしている。
アヤックスが興味を示す逸材の名は。
今年10月にブラジルで行われるU-17ワールドカップでも日本代表の主力として期待される16歳の唐山は、食野のJラストマッチとなったヴァンラーレ八戸戦で2ゴール。9月1日の福島ユナイテッド戦ではJリーグ史上最年少でのハットトリックを達成した。
また中村は、7月21日のセレッソ大阪U-23戦でJリーグ史上3位となる15歳10カ月29日でデビューを果たしている。久保建英に似たセンスを持つレフティは、16歳11日で迎えた福島ユナイテッド戦で2得点1アシストと大暴れ。股抜きあり、ノールックパスあり、そして鋭いシザースからのJ3初ゴールと中村の持ち味が凝縮された90分だった。
本来であれば、いずれガンバ大阪のトップで主力を担うべき才能たちではあるが、彼らの目は既に世界に向いている。デビュー戦後、中村はこう目を輝かせた。
「(スタイル的に)一番近いのは久保建英選手。もっと、あの人に近づけるように頑張りたいです」
アヤックスは2年前から中村への興味を示していたというが、松波強化部長も唐山や中村に関しては、18歳を待たずしてプロ契約することも今後は検討するという。
ネックとなる新卒の年俸制限。
もっとも、若手の海外流出に対して、いちクラブが策を講じるのは限界があるのも事実である。ネックとなるのはJリーグ規約・規程集にある新卒選手に対する年俸制限だ。
アマチュアからプロ契約する際のC契約で上限は460万円。規定の出場時間を満たし、年俸制限がないA契約に移行しても初年度は670万円と天井が定められているのだ。
健全なクラブ経営を目的に1999年に定められた規約ではあるが、育成環境も移籍事情も当時とは異なる。C契約で縛られている若手に対しては、自ずと設定できる移籍補償金も低額とせざるを得ないのが現状だ。
「なんとかしてよ。ABC(契約)があるから、安くなるんやで、と原(博美Jリーグ副理事長)君には言ったけどね」と上野山取締役がこぼすのも無理はない。
グアルディオラは食野にこうアドバイスを送ったという。
「常に野心を持て、それが大事だ」
今後も若者は次々と海を渡る、野心を持って。歴史的にみても、外圧でしか変化できない国である日本だが、Jリーグも今、変化の時を迎えている。