ビッグマッチ・インサイドBACK NUMBER
デブライネの天才的チャンスメーク。
マンC「右の崩し」は芸術の域に。
text by
寺沢薫Kaoru Terasawa
photograph byGetty Images
posted2019/08/20 11:50
漫画のようなカーブを描き、ピタリとスターリングの頭へ。デブライネの1点目のクロスはこれぞワールドクラスだった。
最小限の好機を生かしたトッテナム。
だが、間違いなくフラストレーションはあったはずだ。
この日ゲームを支配していたのは、圧倒的にシティだった。ボール支配率こそ56対44とそれほど開きはなかったが、撃ったシュートはシティが30本(うち枠内10本)に対し、トッテナムはわずか3本(うち枠内2本)だった。
試合はほぼトッテナムの陣地内で進行していた。スパーズが敵陣ボックス内でボールに触れた場面はほとんど思い出せず、シティが攻め続ける展開だったのだから、勝ちきれなかった悔しさはあったに違いない。
逆に言えば、トッテナムからすれば「してやったり」だったかもしれない。王者相手に圧倒的に押されながら、最小限のチャンスで2度追いつき、2-2のドローに持ち込んだのだから。
20分にスターリングに先制ゴールを許した3分後、エリック・ラメラが放ったこの試合最初のシュートで追いついた。35分にアグエロに勝ち越しを許すも、後半、セットプレー1本で、途中出場のルーカス・モウラがファーストタッチをゴールに結びつけて再度追いついた。スパーズがしたたかに勝ち点1を拾ったと見れば、そうとも言える。
強いシティの中心にデブライネあり。
だがそれでも、「シティ強し」の印象は誰が見ても変わらなかったのではないだろうか。
ホーム開幕戦で勝ち点3を逃したとはいえ、シティのパフォーマンスそれ自体はやっぱり圧倒的で、昨季CL準優勝のトッテナムをもってしてもこれほど一方的な内容になるのか、という印象の方が強かった。
そんなシティの中心に君臨していたのが、デブライネだ。この試合の彼は、とにかくチャンスメークが冴え渡っていた。前半に決めた2つのアシストはいずれも絶品で、まさに彼の真骨頂と言えるプレーだった。
まずは20分、中央やや右寄り、ピッチを5つのレーンに区切った際のいわゆる「ハーフスペース」と呼ばれる“定位置”でボールを受ける。
するとダイレクトで右に開いたベルナルド・シウバにさばき、前に出ると見せかけてストップ。DF3人がB・シルバに引きつけられたのを見てバックパスを受けると、これまたダイレクトで右足からファーサイドに正確なクロスを飛ばし、スターリングのヘッドをアシストした。