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甲子園では珍しい戦略的な継投策。
中京学院大中京の4人の投手たち。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2019/08/16 17:45
背番号1を背負う不後祐将を含めた中京学院大中京の投手たちに、高校野球特有の悲壮感はない。適材適所で勝つことが彼らのスタイルなのだ。
レフトにいた不後が再びワンポイントに。
そして7回表、中京学院大中京が反撃に出る。
3連打で1点を返すと、ワンナウトをとられたものの、4番の藤田健斗からの3連続タイムリーなどで一気に7点を奪ったのだ。6回裏のピンチを最小限に抑えて、逆にビッグイニングを作る。勝ち越しを許しながら、それでも流れを引き寄せる見事な試合運びだった。
7回裏、中京学院大中京はクローザー的役割の元にスイッチしたが、その元が制球難で苦しみ1死から2四球を出すと、レフトの不後を再びマウンドに戻した。
これも村田の投入と同じく、相手に流れが傾くのをせき止めるつもりで出したものだという。
橋本が力説する。
「(ワンポイントや短い継投について)こういう短期決戦では必要になると思います。そういう練習をオープン戦からしてきているので、選手はいいピッチングをしてくれたと思います。不後にはあれ以上の負担をかけられませんので、2度目の登板が最後の役割だと思って出しました。よく抑えてくれました」
スクランブルの赤塚も見事な投球。
8、9回は、普段2番手で投げることが多い長身右腕の赤塚が登板した。赤塚によれば、「相模打線は速球に強いから今日は出番がないかもしれない」と試合前に橋本から通達されていたそうだが、2回の攻撃で不後が死球を受けたこともあって、赤塚は出番があってもいいようにと登板機会に備えていたという。
そして8、9回を無失点に抑えて、見事に試合を締めてこうはにかんだ。
「今日は出番がないかもしれないとも言われていましたけど、しっかり準備ができて、いざマウンドに上がったら自分のピッチングができたと思います。相手打者を詰まらせることができたので良かった。全国優勝しているチームに勝てたので、個人的にもチームとしても、大きな自信になりました」