野ボール横丁BACK NUMBER
左頬骨骨折の岡山学芸館・丹羽淳平。
執念の左前安打で見せた人間の強さ。
posted2019/08/16 14:20
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Kyodo News
すっかり左右対称な顔に戻っていた。
「まだ折れてますけど、痛みはないです」
そう振り返ったのは、作新学院戦で先発し、3回5失点でマウンドを降りた岡山学芸館の丹羽淳平だ。
衝撃的なシーンだった。
8月10日の広島商業との1回戦、1回表だった。先発の丹羽は2アウト後、ピッチャーライナーを顔面で受け、その場でうずくまった。
「最初、(打球が)ゆっくり見えたので、避けられると思った。そうしたら急にボールが大きく見えて……」
打球は丹羽の左顔面に直撃したあと、力なくファースト方向へ転がった。
痛みが大きくて、打球は追えず。
丹羽の意識ははっきりしていた。
「痛みの方が大きくて、打球の行方は追えなかった。折れた、と思いましたね」
試合後、病院に運ばれた。CTを撮ったが、脳に異常はなし。レントゲン撮影の結果、丹羽の予想通り、左頬骨の骨折と診断された。
診察を受けた後、丹羽は医師にベンチに戻りたいと懇願し、7回表、「邪魔にならないように」とベンチ後方に再び姿を現した。
試合後、間近で丹羽の顔を見ると、左の頬がこんもりと盛り上がっていた。ただ、その痛々しさとは不釣り合いなほど、丹羽はにこやかに、そして元気そうに取材に応じた。
「次の試合も出られたら、出たいです」
丹羽は2回戦の後、2日間は完全休養し、3日目から練習を再開した。頬に微弱な電流を流すなどし、3日目にはほぼ腫れは引いていたという。食事の際は、最初はうまく顎を動かせなかったが、3日目からは問題なく食べられるようになったそうだ。