Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER
夏の甲子園・史上最強校はどこか?
歴代優勝校をデータで比較する。
text by
小川勝Masaru Ogawa
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2019/08/19 07:00
データは出場校数が49代表となった1978年から2010年までを対象としています。
大量得点の中身を吟味する。
ではこれで「最強チーム」の結論が出るかと言うと、やはりそう単純な話にはならない。なぜなら、大量得点をしても、それが、そのチームの攻撃力の正確な反映とは言えないからだ。
例えば、相手チームのエースが故障して控え投手が投げた場合、実力差以上の点差がつくことはよくある。あるいは相手チームの度重なる失策で、大量得点することもある。そのような試合があると、そこで稼いだ大量得点が、大会トータルの得失点差に大きく影響することになる。したがって、大量得点の中身を吟味しなければ、その得失点差にどの程度意味があるのか、分からないのである。
そのほかにも、得失点差だけでは測れない、そのチームの「強さ」を判断するために、次のような点を検討してみる必要がある。
(1)優勝するまでに、どのようなチームと対戦して勝ち上がってきたのか。対戦チームのレベルによって、同じ得失点差でも価値が違ってくる。
(2)卒業後、優勝メンバーの中から、何人がプロ野球に入ったか。プロ選手が出たかどうかは、そのチームの、ひと夏限りの結果ではなく、潜在力も含めたチームカを評価する裏付けとなる。
エース桑田、4番・清原が3年生の年。
結論から言えば、こうした条件から総合的に判断しても、やはり'85年のPL学園は、ずば抜けた存在だ。エース桑田真澄、4番・清原和博が3年生だったこの年のPL学園は、走攻守、すべての面から見て、間違いなく一流であり「史上最強」の称号に値するテームだ。なぜ、そう言えるのか。その他の有カチ ームと比較しながら、詳しく見ていこう。
'85年のPL学園が、1試合平均8.40という驚異的な得失点差になった最大の理由は、29-7で勝利した初戦の東海大山形戦にある。この時、PL学園は甲子園史上初の毎回得点を達成。22点も点差がつくと、東海大山形の自滅と思われがちだが、そうではなかった。失策は2つあったものの、29失点のうち27点が自責点。四球も7個だけで、32安打と力ずくで奪った29点だったのである。
逆にPL学図が7失点しているのは、大差がついてエースの桑田が6回1失点で降板、あとは控えの投手が投げたことが理由だ(9回には一塁手の清原が登板して2/3回を投げている)。もう少し桑田が投げていれば、点差はさらに広がったはずで、実際の実力は「8.40」より、さらに上だったと言っていい。