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夏の甲子園・史上最強校はどこか?
歴代優勝校をデータで比較する。
text by
小川勝Masaru Ogawa
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2019/08/19 07:00
データは出場校数が49代表となった1978年から2010年までを対象としています。
決勝戦で17-0という大差。
得失点差7.00で2位の'08年・大阪桐蔭は、実力差の出やすい初戦ではなく、決勝(対常葉菊川)で17-0という大差をつけた点は、注目に値する。だがこの決勝は、重要なところで2失策が絡み、自責点は10点だけ。相手の自減という面が強かった。こうした点から見て、大阪桐蔭の得失点差は、PL学園に比肩し得るものではない。
興味深いのは、'89年の帝京だ。得失点差は5.80で4位タイだが、この時のエース吉岡雄二(巨人3位)と優れた守備陣は、延長10回の決勝を含む全5試合で、1点しか取られていない。平均失点は実に0.20だ。通算46イニングでチーム失策わずか1というのも目を引く。チーム打率.331、チーム長打率.448だから攻撃力はやや劣るものの(PL学園の打率は.401、長打率は.692)守りのよさは歴代でも際立っている。投手も吉岡1人に頼り切りではなく、控え投手が通算5イニングを0点に抑えている。
同じ程度の得失点差のチームであれば「得点も多いが失点も多いチーム」より、帝京のように「得点は多くないが失点は常に少ないチーム」の方が、安定感がある。'89年の帝京は、そのような守備的チームとして、歴代で最高峰と言っていいだろう。
'06年夏を制した早実も注目に値する。
この年の帝京は、対戦した相手も、準決勝でエース中川申也(阪神5位)の秋田経法大付、決勝ではエース大越基(ダイエー1位)の仙台育英と、プロ選手を輩出した強敵を倒している。そして帝京からも、吉岡と鹿野浩司(ロッテ5位)という2人の選手がプロ入りしている。この意味でも、'89年の帝京は一定の評価ができるチームだ。
失点が少なく、対戦相手に有力選手が多かったという意味では、斎藤佑樹(日本ハム1位)を擁して'06年の夏を制した早実も注目に値する。得失点差は5.14で9位に過ぎないが、平均失点は、決勝の引き分け再試合を含む7試合を戦って1.43。対戦相手には、2回戦の大阪桐蔭に中田翔(日本ハム1位)と丸毛謙一(巨人育成8位)、準決勝の鹿児島工業に榎下陽大(日本ハム4位)、そして決勝の駒大苫小牧には田中将大(楽天1位)がいた。
中田と田中はすでにリーグを代表する選手としてプロで活躍している。レベルの高い戦いを制しての優勝だったと言える。