オリンピックへの道BACK NUMBER
日本バドミントンを大躍進させた、
韓国の英雄・朴柱奉監督の気配り力。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2019/08/17 11:30
リオ五輪で金メダルをとった高橋礼華・松友美佐紀組と喜びを分かち合う朴柱奉監督(一番左)。
「技術は十分ある。でも勝ちたい意欲がない」
まさに右肩上がりの歩みをもたらしたのは朴ヘッドコーチの尽力にある。
朴氏は、来日して指導を始めた日本の選手たちの最初の印象について、これまでしばしば語ってきた。
「技術は十分ある。でも勝ちたい意欲がない」
負けても悔しがらない、仕方ないと受け止めているようにも感じられたと言う。
だから、ときに叱りながら、勝利への意欲を伝えていった。
それとともに取り組んだのは、レベルの高い国際大会への出場の促進と、代表合宿の改革だった。
それまでは強い選手が集まる大会よりもレベルの低い大会で成績をあげて世界ランキングを上げるのが当たり前になっていた。それでは「自分たちのほんとうの実力が分からない、伸びない」とあらためた。
実業団チームに理解を求める。
また、代表合宿は遠征前に集まってわずかな期間、活動するのが常だった。形式化していると感じ、大幅に日数を増やし、真の意味での強化合宿へと変えた。
そうした姿勢もまた、選手の姿勢を勝利へと向かわせた。
ただ、それらを実行するのは容易ではなかった。
実業団が中心となっている競技ではありがちだが、実業団側は選手が長期間チームを離れていることを好まない。自分たちが選手を強化しているという自負もあるし、また実業団として参加する大会を重視する傾向など、チームの事情を優先しがちだ。
「理解をしてもらうのはとても大変なことでした」
以前、朴氏はこう語っているが、ときに衝突もしながら理解と支持を得ていった。