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習志野には「人間の教科書」がある。
小林監督が敗れても悔やまない理由。 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byKyodo News

posted2019/08/14 16:15

習志野には「人間の教科書」がある。小林監督が敗れても悔やまない理由。<Number Web> photograph by Kyodo News

選抜準優勝の習志野が2回戦で消えた。やはり甲子園という場所は、何が起こるかわからない。

「打たれたボールは、どれも説明がつく」

 この日の鶴岡東の先発は長身左腕の影山雄貴。試合の中で選手らは、打てるとの手ごたえを得ていた。だが、小林は、その自信が力みにつながったという。

「ありがちなんですけど、打てると思って力んだんでしょうね。早いカウントでどんどん打っていってしまって、それがヒットになればよかったんでしょうけど、打ち損じて相手のリズムになってしまった」

 ノープランだった継投も、はまらなかった。

 先発の山内翔太は2回途中、4点を先制され降板。2アウト一、三塁からマウンドに上がったエースの飯塚脩人も初球をタイムリー打とされ、習志野は、いきなり5点のビハインドを背負ってしまう。

 いつもの習志野なら、リリーフした飯塚がピシャリと抑え、それに勢いをもらいながらじわじわと追い上げていくのがパターンだった。しかしこの日は終盤、習志野が追い上げると、直後、飯塚が再び突き放されるというパターンが続き、5-9で敗れた。小林が話す。

「打たれたボールは、どれも説明がつく。コントロールミスとか、球種の選択ミスとか、間合いとか。こういう立場なので、相手を過小評価するということは絶対にない。ただ、鶴岡東さんにはプラスαがありましたね。完敗でした」

人間を深く理解するからこそ。

 勝利への道筋は見えていたが、選手たちがその道を踏み外した。悔やまれる敗戦に思えたが、小林は実にさばさばとしていた。

 得意なボールがきてもミスショットすることもある。ここに投げれば抑えられるとわかっていてもそこに投げられないこともある。それが人間だ。小林が携えていたのは「野球の教科書」ではなく、「人間の教科書」だった。

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習志野高校
小林徹

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