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1番打者の2番手投手でエース温存。
宇部鴻城・岡田佑斗がHRに完投勝利。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2019/08/12 17:00
完投勝利に2ランホームランと大活躍の岡田佑斗。宇部鴻城の2番手投手であり切り込み隊長だ。
「本当に岡田は救世主だと思う」
7年ぶり2度目の甲子園出場を果たした宇部鴻城にとって、2人目のエースである岡田は欠かせない存在である。もともと投手として入学した岡田は昨冬に怪我をしたこともあり、半年間は野手に専念。しかし6月に投手復帰を果たした。
その経緯について尾崎監督が明かす。
「実は5月に一度、投手をやってみないかと岡田に打診したんですけど、そのとき本人は『野手一本で行きたい』と言ったんです。ところが6月間近になって『やりたい』と。投げさせてみるとすごく良くて、大会に入っても抑えてくれるんじゃないかと思いました」
山口県大会の1回戦は岡田が先発し、2回戦はエースの池村健太郎が先発、岡田はリリーフを務めた。そして3回戦と準決勝は岡田、準々決勝と決勝は池村と、交互に先発してきたのだ。
その中で「本当にどうなっていたかわからない」と指揮官が振り返ったのが、準々決勝戦で池村が延長12回、209球を投げ切った後のことだ。
尾崎はこう続ける。
「あの後も投げさせることになっていたら、とんでもないことだと思います。本当に岡田は救世主だと思います」
岡田は2日後の準決勝に先発して完投勝利を挙げた。つまり、池村を温存することができたのだ。
投手としてもエースを援護する。
1試合で209球を投じるのは、健康面へのデメリットが大きい。しかし現行の高校野球のルールでは避けがたいことで、宇部鴻城に限ったことではなく、全国各地区でも起きていることだ。
いずれはこの状況を改善していくことは必要にしても、現時点でチームに求められるのは、いかにエースの池村を援護できるかである。その役を担ったのが岡田だったのだ。
しかしなぜ岡田は、一度固辞した投手に復帰したのだろう。
岡田は力説する。
「投手をしなくなってからずっとセンターをしていましたが、ピッチャーの気持ちがわかるようになったんです。投げられないわけではなかったですし、“なんで自分はセンターだけをやっているんだろう”と思ったのがきっかけです。
大会に入って1、2回戦を僕が投げられたら他の投手が休養できるんじゃないか、と思って自分が監督に投手をやりたいと言いました。今は任された場所でプレーしたいなと思っています」