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海星の「たまたま超攻撃的2番」、
大串祐貴の変身を監督は信じるか。
posted2019/08/12 18:00
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Kyodo News
「流行」ではなく「たまたま」。「バントしない」のではなく「バントできない」。
それが海星の「超攻撃的2番」、大串祐貴だ。
大会7日目第2試合、聖光学院戦で、大串は6回表に2-0とリードを広げる貴重なソロ本塁打をライトスタンドに叩きこんだ。
聖光学院の監督・斎藤智也が「いちばんのスラッガーが2番にいる」と評するように、長打力はチームで1、2を競う。
そんな大串だが、なかなかレギュラーに定着できない日々が続いていた。海星を率いる加藤慶二が話す。
「ひと言でいうと、戦えない選手だった。力はあるんだけど、試合でその力を発揮できない。メンタル面に問題があった」
バントのサインは一度もない。
大串が急成長を遂げたのは、5月に入ってから。加藤は最後のチャンスのつもりで、2番に起用した。その理由をこう説明する。
「たまたま2番しか空いてなかったんです。それと、テストの意味もあったので、打順は早い方がたくさん回ってくるのでいいのかな、と」
すると、大串は大変身。不思議なほど、打ち始めた。ただ、いくら大串が打とうとも加藤はクリーンアップを任せようとは思わなかったという。
「クリーンナップで警戒されたら、打てなくなると思うんですよ。投手との駆け引きができないタイプなので」
大串が2番に定着してからというもの、加藤はバントのサインは一度も出したことがない。
「させないんじゃなくて、できないんで。もし送りバントさせるなら、代打を出します」
加藤はどこか大串のことを信用し切れないようだ。