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ラグビーW杯へ、激化するSH争い。
田中史朗、流大、茂野海人の個性。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byKiichi Matsumoto
posted2019/08/05 19:55
トンガ戦にスタメン出場したSH流大。ベテラン田中史朗、茂野海人とともに三者三様の色を出し合い、チームを勝利へ導く。
茂野「精度を高めることができた」
後半もキックを効果的に織り込み、24−7で迎えた18分に流はピッチをあとにする。代わって出場した茂野も、キックを交ぜたゲームメイクを披露した。
「20分ちょっとの出場でしたけど、いいインパクトは与えられたかなと思います。前の試合はキックミスがありましたけど、フィジー戦からトンガ戦までの1週間で、精度を高めることができました」
世界ランク9位のフィジー、同14位のトンガとの連戦は、W杯のプール戦で激突するサモアを想定したものと考えることができる。トンガ戦は最終的に5つのトライを奪い、41−7で快勝した。相手のコンディションが整っていないことを差し引いても、評価できるものだと言っていい。
2試合連続の勝利については、流も「素晴らしいこと」と話す。ただ、相好を崩すことはないのだ。
「自分たちが求めているものを、目ざすものを、手に入れたわけではないので。あくまでもW杯への過程です。ひとつの積み上げとして結果が出たのは素晴らしいですが、W杯で結果を出すことだけを考えています」
チームを操縦するスクラムハーフ。
トンガ戦を終えたチームは、パシフィックネーションズカップの第3戦が行われるフィジーへ移動した。8月10日にアメリカと対戦する遠征メンバーには、流と茂野に加え前2試合をケガで欠場した田中が選ばれている。
流は表情を引き締める。
「トンガ戦も課題はたくさんあります。次のアメリカ戦で一歩でも成長できた姿を見せられるように、ここからもいい積み上げをしたい」
トンガ戦でゲームの色彩を変えたキックについても、彼自身は「スペースがありましたから、あれぐらいはできないと」とさらりと話す。ジェイミー・ジョセフHCが認めるリーダーシップを発揮して、チーム全体を進むべき方向へ導くのが流という選手である。
チームメイトの個性を引き出しながらゲームコントロールをするのがスクラムハーフだとしても、さりげなく、それでいてしっかりと自らの仕事を遂行し、なおかつ勝利を引き寄せたトンガ戦は、9月4日に27歳になるこの男の存在価値を改めて知らしめるものだった。