太田雄貴のEnjoy FencingBACK NUMBER
もう“東京五輪後”を見据えている、
フェンシング協会は改革を恐れない。
text by
太田雄貴Yuki Ota
photograph byKyodo News
posted2019/08/03 18:00
世界ランキング1位となった見延和靖。トップランクになった日本人選手は、太田雄貴会長以来、2人目となる。
運営もスタープレーヤーになる意識。
スピード感と組織としてのガバナンスを両立させることは、なかなか難しいことですが、ここを解決するシステムを作ることで、結果的に速い組織となれば、と考えています。
6月には、アジアフェンシング選手権が、千葉ポートアリーナで開催されました。日本勢は4つの金メダルを含む14個のメダルを獲得。これまで多くのメダルが韓国や中国で占められていた中で、TOKYO 2020へ、そしてその先へ向けて、スタンダードとなるべき成績を残すことができたと思っています。
大会の運営面に関しても、これまでなら私が会場で細かく注意してきたような運営上のほころび――たとえば広告バナーやボードの歪み、床の上で電源コードなどが整理されないまま放置されていたり、といった細かな部分がしっかり改善されていました。
スタッフがきっと「太田が見つけたら怒り狂う」ポイントを先回りして潰してくれていたからだと思うのですが(笑)、この点でも組織の成長を感じた大会でした。
6月30日の段階で、男子エペ・見延和靖選手が日本初の世界ランキング1位になるなど、TOKYO 2020に向けてフェンシング界の「顔」になる選手が出てきたことも、とても嬉しいニュースです。
と同時に、「スタープレイヤー」というのは選手からだけではなく、私たち運営の側からも次々と出てこなければいけない、と感じるようになってきています。
改革を続けられる組織に進化させる。
具体的にいえば、スポーツ、スポーツビジネスに関連するようなカンファレンスやセミナーへの出席や、メディアのインタビューといった形で露出するのが、会長である僕だけでなく、協会の他の人材も外へ出ていける状況となってほしい、ということです。
たとえばBリーグにかんしては、大河正明チェアマンだけでなく、常務理事の葦原一正も積極的にさまざまな形で露出をしていますよね。
トップだけでなく、キャラ立ちしていて、自分の言葉を持った面白い人間がたくさんいる組織。フェンシング界には、そうした人がたくさんいるんですよ、ということをアピールできるような状況を作りたい、と思っています。
もちろん、そんな人は突然あらわれるわけではありません。人は、何かブレイクスルーする瞬間に大きく飛躍をしますが、それもまた予測は難しい。人の成長については「信じて待つ」ことを大事にしつつ、急ぐべき改革は果断に手を付けていく。
この両輪で、協会を「改革を続けられる組織」へと進化させたい。僕は今、こう思っています。
(構成/宮田文久)