太田雄貴のEnjoy FencingBACK NUMBER
もう“東京五輪後”を見据えている、
フェンシング協会は改革を恐れない。
text by
太田雄貴Yuki Ota
photograph byKyodo News
posted2019/08/03 18:00
世界ランキング1位となった見延和靖。トップランクになった日本人選手は、太田雄貴会長以来、2人目となる。
組織全体で総合的に戦略を練る。
一番大きな組織変更は、「事業本部制」を敷き、それぞれの事業担当者の責任を明確にする、ということです。
少し細かい話になりますが、フェンシング協会のような公益社団法人においては、公益事業ごとに会計が分かれています。
簡単にいえば、財布が別々にあるようなものです。フェンシング協会には「競技会」「育成と普及」「強化」という3つの公益事業がありますが、実はこれまでは、誰がそれぞれの事業・会計について責任を持つのか、その所在が完全には明確ではありませんでした。そこをクリアにするのが目的の一つです。
今後は上記した3つの事業本部を設け、その本部長は、事務局の常務理事以上の人間が担当し、それぞれに縦のラインで「事業ごとにどれだけの予算が必要なのか」を、責任をもって考えてもらうようにします。
一方、その3つの事業本部を横に貫くラインとして、経営戦略やPR、マーケティングといった担当の人間たちがいて、全体の予算をにらみながら運営のプランを練り上げていくわけです。いわば縦の糸と横の糸が絡み合いながら、組織全体で総合的に戦略を練っていく形となります。
議論を尽くす過程を加えていく。
また、これは極めてプラクティカルな組織運営上のルール改定ですが、理事会の運営、議論のあり方に関しても、従来の議事項目としてあった「審議事項」と「報告事項」の中間に位置する事項として、「協議事項」というものを新たに設けました。
組織として事業をひとつひとつ進めていくにあたって、大事なのは数をたのまない運営と、意思決定や遂行のスピード感、と心がけてこの2年をやってきましたが、時として根回し不足や不十分な説明が原因で、組織内に不満が残る形で進めてしまった案件もあったように感じています。
できるかぎり気をつけていたつもりですが、2期目を始めるにあたって、「議論を尽くす過程を加えた方が結果として速くなる」と、理事の1人からアドバイスをいただき、それを採用することにしました。
現在進行形で進んでいる事柄に関して、それぞれに意見を出してもらう場を設け、ドラフト(草案)の段階から、よりみんなを巻き込んでいくことで組織内の意思統一を図っていくスタイルです。