ビッグマッチ・インサイドBACK NUMBER
アヤックスは売る側で、勝つ側だ。
そのプライドが新たな逸材を生む。
posted2019/07/28 11:40
text by
寺沢薫Kaoru Terasawa
photograph by
Getty Images
「アヤックスでは本当に楽しく過ごせていたが、今は“大人の世界”に足を踏み入れた気分だよ。そういう挑戦に魅了されたんだ」
マタイス・デリフトが、アヤックスからユベントスに移籍した。19歳にしてアヤックスのキャプテンを務めあげ、守備を統率し、チームのチャンピオンズリーグ準決勝進出、そして国内リーグとカップ戦の2冠に大きく貢献したデリフトは、様々なクラブからのオファーや残留などの多くの選択肢の中から、セリエA挑戦を選んだ。
「僕は子供の頃からイタリアの守備スタイルに魅了されてきた。お手本としてきた選手の多くはイタリア人。パオロ・マルディーニ、フランコ・バレージ、アレッサンドロ・ネスタ、ファビオ・カンナバーロ……DFについて話すとき、そういう選手たちは常に出てくる名前だった」
「アヤックスが大好きだし、恋しくなることだろう。でも、世界のトップに到達したいのなら、さらに大きな一歩を踏み出して“快適な場所”から抜け出さなきゃいけない。あえて困難に飛び込まなきゃいけないんだ」
そう言って、デリフトはアヤックスを巣立っていった。その少し前には、同じくチームの大黒柱だったフレンキー・デヨングもバルセロナへと旅立っている。
デヨングがバルサで見せた落ち着き。
彼もまた、「プレーするのが子供の頃からの夢だった」というバルサからオファーを受け、次の一歩を踏み出す決断をした。「あまりプレッシャーは感じていない」と言うデヨングは、デビューゲームとなった日本でのプレシーズンマッチ、チェルシー戦で早くもらしさを見せた。
臆することなくボールを受け、うまく相手を食いつかせてからターンやワンツーで相手を剥がし、パスをさばいていく。
それらを勇敢に、優雅に、そしてリズミカルに続けるプレーはアヤックス時代のそれと変わらず、飄々としているが肝の据わった選手であり、ビッグクラブでより大きくなる男なのだと、改めて感じさせられた。