ビッグマッチ・インサイドBACK NUMBER
アヤックスは売る側で、勝つ側だ。
そのプライドが新たな逸材を生む。
text by
寺沢薫Kaoru Terasawa
photograph byGetty Images
posted2019/07/28 11:40
2018-19シーズンのCLベスト4で鮮烈な印象を残したアヤックス。主力2人が抜けた今季も躍進の予感が漂う。
「大人の階段」を上るための場。
彼ら2人のように、未来のスーパースター候補がより大きなステージを求めてチームを去っていくのは、アヤックスというクラブの宿命である。
欧州屈指の名門ではあるものの、予算規模で言えば昨季CLのベスト16以上に残ったクラブで最小であり、オランダではトップ・オブ・トップだが、欧州全体で見れば選手を供給する側のクラブである。
デリフトが言ったような「大人の階段」を上るための基礎を育むための場であり、若い逸材たちがアドレセンス(青年期、思春期から成人期への過渡期)な時期を過ごすチームなのだ。
かくしてデリフトとデヨングの旅立ちを見届けたアヤックスは、来たる新シーズンを、二枚看板抜きで戦うことになる。
ただ、ここまでの段階で、意外なことにビッグクラブへと引き抜かれた選手はこの2人だけ。移籍マーケットはまだ開いているから、まだ引き抜きはあるかもしれないが、それでも昨季躍進したチームは完全に解体されたわけではなく、2年連続のサプライズも十分に期待できるだけの陣容がそろっている。
デリフトの後釜候補は多士済々。
最終ラインは、デリフトが抜けた以外は昨季と同様で、仕切り役は経験豊富なダレイ・ブリント。エリク・テンハーフ監督の方針によりビルドアップやポゼッションワークにも参加する両サイドバックも、今夏はコパ・アメリカ、アフリカネーションズカップに出場したアルゼンチン代表のニコラス・タリアフィコとモロッコ代表のヌセル・マズラウィが“続投”だ。
デリフトの後釜候補には、ユースが生んだ19歳の大器ペル・スフールスの成長が著しく、また移籍市場ではクラブ・アメリカからメキシコ代表のエドソン・アルバレス(21歳)、アルゼンチンのデフェンサ・イ・フスティシアからリサンドロ・マルティネス(21歳)、ヘーレンフェーンからキク・ピエリー(19歳)の3名を獲得しており多士済々だ。