クライマーズ・アングルBACK NUMBER
「山岳遭難」は25年間で3倍以上に。
報道では分からない数字の裏事情。
posted2019/07/15 09:00
text by
森山憲一Kenichi Moriyama
photograph by
Kenichi Moriyama
「山岳遭難が最多 バックカントリースキーの外国人目立つ」
「山の遭難、過去最多3111人 外国人は初の100人超」
「昨年の山岳遭難、過去最多の3043人 うち死亡・不明335人」
「山での遭難、過去最多に 半数が60歳以上」
これは、山岳遭難について報じたここ数年の朝日新聞の見出しである。いずれも例年6月に発表される警察庁の統計で、上から2019年、2018年、2016年、2015年となっている。2017年はわずかに前年を下回ったため目立つ記事がないが、毎年のように山岳遭難が「過去最多」を更新していることがわかるだろう。
じつは、これはこの5年間に限ったことではない。これまで20年以上にわたって、ほぼ毎年、6月には「過去最多」が報じられているのだ。
1995年から3倍以上に増えた。
1995年以降、山岳遭難の総数が前年より少なかった年はわずかに6年のみ。ほか19年はすべて前年を上回った。その結果、1995年には年間800件ほどだった山岳遭難が、今ではその3倍以上、2700件近くにまで膨れ上がっている。
なぜこんなにも山岳遭難が増えているのか。
一般に、遭難件数が増加するときは、以下のふたつの理由が考えられる。
1)なんらかの理由で登山の危険度が増している
2)登山をする人の総人口が増えている
私は1987年に登山を始め、1996年に登山雑誌『山と溪谷』の編集者となった。以来、山岳遭難が増え続けたこの四半世紀、ずっと登山雑誌に関わり続けているが、登山の危険度が増したという印象はない。遭難が3倍以上に増えた実感などまったくなく、むしろ、道具や通信手段の発達によって、登山の安全度は高まっているという認識だ。