オリンピックへの道BACK NUMBER
ウエイトリフティング男子復権の星、
糸数陽一が見据える「東京五輪で金」。
posted2019/07/15 11:45
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Getty Images
悲願のメダルへ向けて、一歩一歩、進む。
約1年後に迫った東京五輪。ウエイトリフティングの糸数陽一にとってはリベンジの場となる。日本男子復権の期待も背負う彼は来たるオリンピックへと着実に実績を積み上げてきた。
そもそもウエイトリフティングのオリンピックでの歴史は古い。1896年の第1回大会から採用され、一時除外されたものの1920年のアントワープ五輪で再び五輪種目となった。頼れるのは、自身の身体のみ。持ち上げるのは、体重の倍をはるかに超えるバーベルだ。そのシンプルさの一方、パワーだけでは持ち上げることのできない奥深さもあり、今日までオリンピックで競われ続けている。
かつて、日本も輝かしい成績を残してきた。1960年代に金メダルと銀メダルを獲得した三宅義信をはじめ、数々のメダリストを輩出している。だが、1984年のロサンゼルス五輪で3つの銅メダルを獲得したのを最後に、メダルには届かずにいる。一方、2000年のシドニー五輪から採用された女子では三宅宏実が活躍。女子に関心が集まる中、男子に現れた期待の星が糸数だった。
五輪で4位、世界選手権で銀。
2016年のリオデジャネイロ五輪62kg級では表彰台にあと一歩と迫る4位。翌2017年にアメリカのアナハイムで行われた世界選手権同級では、同大会日本男子36年ぶりのメダル獲得となる2位という成績を残している。
その過程で、喜びと悔しさを味わってきた。
初めてのオリンピックとなったリオでの試合を終えたあと。スナッチ、ジャークの2種目トータルで日本新を2kg更新する302kgでの4位、しかもすべての試技を成功させるパーフェクトな展開に、飛び上がるほどの喜びを見せた。糸数は言った。
「表彰台が見えていたので悔しさはありますが、内容は満足です。胸を張って帰りたいです」