【NSBC補講I】 池田純のスポーツビジネス補講BACK NUMBER
八村塁とジョーダンブランドの契約。
「競技以外の個性」が人生を変える。
text by
池田純Jun Ikeda
photograph byGetty Images
posted2019/07/13 11:45
サマーリーグの1試合ごとの結果が報じられるなど、早くも日本でフィーバーの八村塁。
服装という形でも自分を表現する。
これは「アスリートは服装も意識しよう」というレベルの話ではありません。彼の生き様が、服装という形でも表現されていることが重要なのです。
アスリートにとって生き様がなぜ大事かというと、それがないと、ただの「スポーツがとんでもなくうまい人」で終わってしまうからです。もちろんそれはそれですごいことなのですが、もはやそれで終わりでは世間は驚かない時代なのです。
ある競技を限界まで極めていくことには価値があるとしても、それだけでは現役を引退したら何もなくなってしまいます。社会への影響力も持ちえません。
サッカーの本田圭佑選手や長友佑都選手が近年ピッチ上に留まらない活動をしているのは、いつか現役生活が終わった後も、人生が続いていくのをわかっているからでしょう。そのフェーズも充実させるために、現役の時から選手以外の活動やストーリーを始める必要性を感じているからに違いありません。
彼らだけでなく、最近は「競技だけやっていればいい」と考える選手は確実に減っています。指導者や解説者になってその競技の世界で活動するにせよ、競技と離れて新しいジャンルに挑むにせよ、引退後につながる何かを現役時代から始めたい、という選手のニーズは確実に高まっています。
現役時代の一番影響力があるタイミングで、人生を通して“生き様ブランド”に人生を通して昇華させることのできる競技外の何かを掴みたいと本能で感じ、アスリート特有のパワーと行動力をもって遮二無二挑戦する選手が増えるでしょう。
「プレーだけ」は人生を制限する。
一方で今は、アスリートが現役を終えた後に進む道を決めるのが手探りすぎると思いませんか。競技以外のことを始めると「プレーに集中しろ」とか「練習しろ」と言われる状況がまだまだ強くて、たとえ何かやりたいと思っても手がかりすらないことがほとんどです。
しかしその考え方がアスリートの人生を制限していることを、本人たちは気づき始めています。
そこで私が最近あったらいいなと感じているのは、アスリートと経営者をビジネスパートナーとしてつなぐマッチングサービスです。アスリートは自分の興味や関心がある分野について知識と能力のある経営者と組むメリットがあり、経営者はアスリートのファンと知名度、投資財力やストーリー性、つまり「生き様」に魅力を感じます。
この両者をパートナーとしてつなぐことで、大きな可能性が生まれます。
今も自身のコネクションで経営者とのパイプをつくっているアスリートが多いのは周知の事実です。それがより効率的によりピンポインントで、より気軽に手軽にマッチングされるといいですよね。