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勝負弱いFC東京を変えたケンタ語録。
飾らず本音な長谷川監督の接し方。
text by
馬場康平Kohei Baba
photograph byGetty Images
posted2019/07/09 17:30
試合中、熱心に戦術的な指導をする長谷川健太監督。この指導はFC東京の首位快走に欠かせない。
東慶悟の印象に残っている浦和戦。
取材で聞こえてくる選手の声も、例年とは少し調子が違ってきている。今季から主将に指名された東慶悟は、前半戦で一番印象に残っているゲームとして、試合終盤に追いつかれて1-1で終わった敵地での第5節・浦和レッズ戦を挙げた。
「一番印象に残っているゲーム? 勝てなかった浦和戦かな。あの試合からは勝っているときの試合運びや、ゲームの終わらせ方だったり、学ぶことが多かった。勝つことよりも、負けや、引き分けから学ぶことのほうが多かった。
それを修正しながら戦ってきた前半戦だった。試合は勝たないといけない。そのために何をすべきかをみんなで整理した。そこから試合運びや、終わらせ方はすごくよくなったと思う。そういうことが明確になった」
森重も口にする「分かりやすさ」。
勝負は表裏一体で、もちろん負ける理由も存在する。勝利を逃した後こそ、監督の見せ場なのかもしれない。そうしたトライ&エラーの繰り返しによる成功体験の積み重ねが、現在首位を走る一番の理由だ。
指揮官・長谷川健太は、Plan(計画)、Do(実行)、Check(分析)、Action(改善)のPDCAサイクルをいかに回しているのか――。東は「課題をいつも端的に挙げて多くは語らない」と言い、「だから分かりやすい」と口にする。守備の要の森重真人は、この東の言葉に続いた。
「あれも、これもというより、1つか2つに絞って問題点を言うだけだから選手にとっては確かに分かりやすい。それも1年という長いシーズンを見越しているのだと思う。そのときどきの課題はあるけど、1年はその積み重ね。以前指摘されたことが改善したとしても、それが1年を通してうまくいくわけじゃない。
人間なので忘れたり、薄れたりすることもある。そんな時に、健太さんはまた必ず同じことを言う。そのときどきの改善点をハッキリさせて、それにみんなでまた取り組む。その繰り返し。1年通して見てみると、あれにも、これにも取り組んだなって。1つずつの積み重ねが、気づけば大きな積み上げになる」