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中島翔哉がコパで放った異質の輝き。
その打開力は南米各国も警戒した。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byGetty Images
posted2019/06/29 09:00
中島翔哉はゴールを挙げたエクアドル戦以外でも“らしさ”を見せた。噂に上がるポルトへの移籍も正式決定するのだろうか。
久保、杉岡との新ユニット形成。
一方で、個のプレーをより生かすための方策として、シンプルに周りを使うプレーにも常に思いを巡らせている。
コパ・アメリカでは、親善試合で組んできたトップ下・南野拓実、左サイドバック長友佑都というユニットではなく、久保建英らや杉岡大暉との新ユニットが形成された。
しかし、いかんせん互いの特徴を知るための時間が短く、また、親善試合とは格段に強度の違う相手だったこともあって、連係攻撃を見せる場面は限定されてしまった。
ただ、それはチームの本意でもないし、中島の本意でもない。
中島はチリ戦の後、周りとのコンビネーションについて聞かれ、「個人的にもいろいろやっています」と、コミュニケーションを図っていることを窺わせながら、「それを試合で見せていきたい。普段一緒にやるメンバーではないので、そういうところも含めてみんなで協力して良いサッカーをできれば良いと思います」と話していた。
そして実際に、ウルグアイ戦では後半14分に左サイドをオーバーラップした杉岡にシンプルにパスを出し、三好康児の2点目につながる得点機を演出している。
エクアドルの監督が話した評価。
だが、それでも言えるのは、中島の最大の魅力はときに強引にも映る個の勝負だということだ。ウルグアイ戦の後半2分にペナルティーエリア角で相手DF2人と対峙し(近くには3人目のDFもいた)、ルーレットでかわして突破していったシーンは、ワクワクを通り越してゾクゾクする光景だった。
判定は別として、あれをPK奪取と見た人は少なくなく、中島は日本代表が今後対戦するすべての相手国に脅威を感じさせる存在になったと言える。現にエクアドルのゴメス監督は試合前日会見で日本の印象を聞かれ、このように分析していた。
「日本代表は統率が取れていて、技術が高く、スピーディで技術がある。個人プレーでもサシの勝負で相手に勝てる技能がある。ウルグアイ戦を見たが、たくさんのゴールチャンスがあった」
このコメントは興味深いものだった。これまで日本の印象を聞かれた諸監督は「スピード、俊敏性、持久力、組織力」を特徴として挙げるのが常だったからだ。
コパ・アメリカで中島が相手の指揮官から「個」への警戒心を引き出したのは、日本というチーム全体のポテンシャルの評価がひとつ上がったことにもなるのではないか。