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箱根で優勝すれば71年ぶりの快挙。
明治大学を蘇らせたエースの人間性。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byYuki Suenaga

posted2019/06/27 17:00

箱根で優勝すれば71年ぶりの快挙。明治大学を蘇らせたエースの人間性。<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

2019年の箱根駅伝では、17位。しかし今シーズンはシード権獲得候補との声も大きい。

阿部弘輝の存在はタイム以上に大きい。

 全日本のメンバー構成も上級生が5人、下級生が3人とバランスがいい。特に大きな期待を背負って入学してきた3年生、小袖、前田、村上がようやく戦力として計算できるようになってきた。

 そして躍進の大きな要因となっているのが、大黒柱である阿部の存在だ。

 7月にイタリア・ナポリで行われるユニバーシアードの代表にも選ばれている阿部のスピードは学生屈指のもので、5000mを13分42秒46、10000mでは27分56秒45という記録を持っている。

 本来であれば阿部は強い選手がそろう4組目を走るのが筋だが、今回はユニバーシアードを控えているということで1組目で走り、チームに勢いをつけた。

 それだけではなく、後輩をインスパイアする役割を担っている。

周囲のレベルを引き上げる能力。

 最終組で自己ベストをマークし、成長著しい2年生の鈴木は、

「レース前に、阿部さんから『お前は調子がいいから28分台出るよ』と声を掛けてもらっていたので、頑張るしかないと思いました。阿部さんという目標があるので、部全体として練習の質が上がってきていると思います。みんな、強くなりたいという気持ちが強くなっている気がします」

 と、阿部の存在が大きな刺激になっていることを明かした。

 阿部のような人材が部にいるかどうかで、その後の数年間の結果まで影響されてくる。リクルーティングの重要性としては、スピードだけでなく、どれだけ人をインスパイアできる人材かということも大切だ。

 実際、結果が良かったこともあるが、ミックスゾーンでレースを振り返る明治の選手たちの表情が良かった。

 質問に対して快活に答えてくれ、しかも質問者の目を見て話す選手が多かった。

 自分の結果、力に自信がなければ大学生の若者にはなかなか出来ることではない。いい雰囲気で練習が行われていることは想像に難くない。

【次ページ】 2019年は明治の年なのか。

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