炎の一筆入魂BACK NUMBER
交流戦最下位の広島、優勝は0%?
3連覇した“結束力”を取り戻せるか。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2019/06/25 08:00
開幕以降、不振から抜け出せない田中広輔。連続出場記録も636試合で途絶えた。
切り込み隊長も不振を抜け出せず……。
攻撃面で3連覇を支えた切り込み隊長の田中広輔も開幕から打率1割台が続き、6月20日ロッテ戦で連続フルイニング出場が635試合で途切れた。翌21日には連続試合出場にも636試合で終止符を打った。
積み重ねた636試合という輝かしい記録が、気づかぬうちに体に歪みをうんでいたのかもしれない。試合数だけでなく、遊撃手というポジションに加え、昨年まで3年連続でリーグ最多打席に立った負担は誰にも分からない。
若き4番鈴木誠也、開幕から安定する菊池涼介、攻守の要・會澤翼、周囲からエースと認められた大瀬良大地だけでは支えられなかった。5月のような勢いを失えば、地力が問われる。脇を固める柱を失った広島が安定感を欠いたのは必然だったのかもしれない。
最後まで連動性がなかった広島打線。
広島は、パ・リーグの「パワー野球」に屈したのか。
今季の交流戦も6月23日時点でパ・リーグが57勝45敗4分と勝ち越している。指名打者のある打線を相手にするパ投手には球威だけでなく、データに裏付けされた捕手の配球にも思い切って投げ切れる精神力と技術を持ち合わせている選手が多い印象を受けた。
選手からはこんな声も聞かれた。
「セ・リーグとパ・リーグでは配球が違う。変化球で来るだろうというところでも真っすぐで来ることがある」
想定以上の球威、想定以上に力で押してくるスタイルが攻略を難しくした面もあったのかもしれない。
広島は12球団ワーストのチーム打率2割1分9厘に終わったが、チーム打率ワースト2位は交流戦優勝のソフトバンク(2割3分3厘)だった。12球団最多の32本塁打(広島は12本塁打で9位)が攻撃の突破口となり、決定打にもなった点はあるが、それはリーグの戦い方と同じ。広島も交流戦前までは本塁打数はリーグ4位。もともと本塁打で打ち勝ってきたチームではない。
昨季から選手の入れ替えもあり、昨季以上に小技や足を使って繋ぐ「スモール野球」の色が濃くなった打線で、交流戦前までにリーグ首位に立っていた。ただ、交流戦に入ると攻守にノーガードの打ち合いを挑んだようにもみえた。
交流戦前までリーグ最多の盗塁も、交流戦では計16度狙って失敗5度。成功率6割8分8厘だった。突破口を開こうとした策も、失敗に終われば勢いは消沈する。選手個々の能力だけに頼らず、打線としての連動性が広島の強み。交流戦では、その歯車がかみ合っていなかった。