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リスグラシューが異次元に強すぎた。
宝塚記念圧勝で高まる海外への期待。
posted2019/06/24 11:30
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Yuji Takahashi
GI馬6頭が顔を揃えた「春のグランプリ」第60回宝塚記念(6月23日、阪神芝内回り2200m、3歳以上GI)。優勝したのは、ダミアン・レーンが騎乗した3番人気のリスグラシュー(牝5歳、父ハーツクライ、栗東・矢作芳人厩舎)だった。
昨年のエリザベス女王杯につづくGI2勝目。牝馬による宝塚記念優勝は、1966年エイトクラウン、2005年スイープトウショウ、'16年マリアライトに次ぐ史上4頭目の快挙だった。
ほかの馬には失礼な表現になるが、GIでは珍しいほどの「圧勝」というより「楽勝」だった。
紅一点のリスグラシューは、大外12番枠から好スタートを切り、抑え切れないほどの手応えで正面スタンド前を進んだ。掛かり気味にも見える走りで先行馬群に取り付き、ハナを切るキセキに外から並びかけるように1コーナーへと入って行った。
そのままキセキを1馬身半ほど前に見る2番手の外目で折り合いをつけた。
4コーナーを回りながらキセキに並びかけて直線へ。ラスト200m地点でレーンの右ステッキが入るとさらに加速し、2着のキセキを3馬身突き放した。
キセキのレース運びは正しかったが。
勝ちタイムは2分10秒8。阪神芝2200mで行われた宝塚記念では史上2番目に速いタイムだった。
しかし、馬場コンディションがよかったからこの時計が出たのかというと、そうではない。
アルアイン(4着)の北村友一は「少し緩い馬場がこたえた」、レイデオロ(5着)のクリストフ・ルメールは「緩い馬場はよくなかった」、ノーブルマーズ(6着)の高倉稜が「馬場に脚をとられた」とコメントしている。良発表ではあったが、毎年この時期の阪神芝コースがそうであるように、騎手の感覚としては道悪に近い状態だった。
そうした馬場状態のせいかどうかわからないが、キセキもスタート直後はなかなか進んで行かず、鞍上の川田将雅が追っつけてようやくハナに立った感じだった。
そのキセキをリスグラシューは楽に追いかけ、2番手から上がり3ハロンをメンバー最速、それも2番目のスワーヴリチャード(3着)よりコンマ5秒も早い35秒2でまとめてしまったのだから、後ろの馬にはどうすることもできない。
逃げてレースをつくった キセキも、ラスト3ハロンをメンバー中3番目に速い35秒8で上がるペースに持ち込んだのだから、川田の戦術は間違っていなかった。その証拠に、3着は2馬身ちぎれ、4着もさらに2馬身離れていた。
要は、リスグラシューが強すぎたのだ。