松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
修造、ボッチャ・廣瀬隆喜に挑戦!
振り子投法と、特注車いすの謎。
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph byYuki Suenaga
posted2019/06/24 07:30
いよいよ廣瀬さんと修造さんの対戦が始まった。アナリストの渋谷さんが、修造さんの味方につき、ボールをどこに投げるべきかをアドバイスしてくれるが……。
廣瀬独特の投法に松岡も興味津々。
廣瀬さんは、基本的にアンダースロー。遠心力を使うかのように、ボールを持った左手を前後にブラブラさせながらタイミングを図り、ボールを投げていく。第1投は、きれいな放物線を描いて、ボスン、と床に落ちた。しかしジャックボールには寄せきれず、松岡さんが投げた赤いボールの方がジャックに近い。2球目以降は、ジャックからより遠いボールの選手から順に投げていく。先攻、後攻の順番が、ここで崩れることになる。
廣瀬「私の方が遠いから、もう一度投げます」
松岡「ちょっと待って。今の投げ方、すごく良いですね。あえて浮かせたことでボールがバウンドしませんでした」
廣瀬「確かにボウリングみたいに転がすとランが伸びちゃって大きく外れることがあります。こうして山なりに上げて落とすと止まりやすかったりする。すぐにはできないかもしれませんけど」
松岡「いやあ、今の投げ方を練習したいな。試合中はもちろん、練習できませんよね。わかりました。投げて下さい。見て覚えます」
廣瀬さんの第2投。1投目とは異なり、スルスルと転がした青ボールはジャックボールに軽くコツンと当たり、そのまま動かない。ナイスボール!
廣瀬「私のボールの方が近くなったので、次は松岡さんです」
松岡「近くなったっていうか、ジャックボールに接してますよ! それにしても、廣瀬さんの独特の腕振り、本当に正確なリズムですね。投げ方は、誰に教わったんですか」
廣瀬「最初に教わったときからずっとこれです。上投げとかもあるんですが、自分で投げやすかったのが今のフォームなんです。ひとつだけ松岡さんにアドバイスします。中指がボールの真ん中に来るようにして握って、中指を最後まで目標に向けていく。そうするとだいたい真っ直ぐにいきます。あとは距離感なので、当然慣れも必要ですが」
松岡「次は僕ですね。でも、こんな風にジャックと相手ボールがくっついている場合はどうすれば良いんですか」
途方に暮れる松岡さんに助け船をだしたのは、戦術担当のアナリスト・渋谷さんだ。
渋谷「この場合は、ジャックに接しているボールに当てて弾くか、ジャックの後ろ側を狙うか。廣瀬君がよくやるんですけど、真っ直ぐ上から落として狙うのもありです」
松岡「そんなの無理ですよ! 無理に決まってます。転がすならまだしも、上から狙うって。本当にそんなことをやってるんですか」
廣瀬「わりと試合では。リオの時がまさにこんな状況でした」
渋谷「ボールが重なっているときは、そのボールの上を転がしたりね。雪だるまみたいに上に重ねる戦術もあります。距離が近ければ近いほど勝ちなので。こういうことも考えながらやってます」
松岡「(唖然とした様子で)戦術ってそんなに奥が深いんですか」
渋谷「奥が深いですし、その戦術をどうやって使いこなしていくかも重要です。私の専門は体の動きなので、彼のフォームや投げ方も研究しています。この車いすにも工夫があって、理学療法士でもあるもうひとりのチームスタッフと一緒に設計しました」
松岡「ということは、この車いすはボッチャ専用と言うことですか」
渋谷「世界でも彼だけのオリジナルです」
松岡「えっ、オリジナル! どの辺りが?」