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『死に山』
あの「ディアトロフ峠事件」を、
“身近な悲劇”に感じられる一冊。 

text by

万城目学

万城目学Manabu Makime

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posted2019/06/25 07:30

『死に山』あの「ディアトロフ峠事件」を、“身近な悲劇”に感じられる一冊。<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

『死に山』ドニー・アイカー著 安原和見訳 河出書房新社 2350円+税

 今からちょうど六十年前のことだ。

 ロシアはエカテリンブルク(W杯で日本×セネガルが行われたロシア第四の都市)にある、ウラル工科大学に所属する学生らが雪山で遭難し、トレッキングに参加した九人全員が死亡した。

 彼らの死の状況は実に奇妙だった。テントの前にブーツを置いたまま、暴風が吹き荒ぶマイナス三十度の屋外へ、ロクな防寒具も身に纏わず飛び出し、テントから一・五キロほど離れた地点で次々と発見されたのである。その死体はさらに奇妙だった。衣服を失った者、やけどした者、舌がなくなっていた者、頭蓋骨が砕かれていた者、衣服から多量の放射能が検出された者――。

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