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『死に山』
あの「ディアトロフ峠事件」を、
“身近な悲劇”に感じられる一冊。
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![万城目学](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/-/img_63c0172edf1a3eec5d5017836b5eb9301895.jpg)
万城目学Manabu Makime
photograph bySports Graphic Number
posted2019/06/25 07:30
![『死に山』あの「ディアトロフ峠事件」を、“身近な悲劇”に感じられる一冊。<Number Web> photograph by Sports Graphic Number](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/3/8/700/img_38eced46bb45fffa6bd47b0dad6afcca122034.jpg)
『死に山』ドニー・アイカー著 安原和見訳 河出書房新社 2350円+税
今からちょうど六十年前のことだ。
ロシアはエカテリンブルク(W杯で日本×セネガルが行われたロシア第四の都市)にある、ウラル工科大学に所属する学生らが雪山で遭難し、トレッキングに参加した九人全員が死亡した。
彼らの死の状況は実に奇妙だった。テントの前にブーツを置いたまま、暴風が吹き荒ぶマイナス三十度の屋外へ、ロクな防寒具も身に纏わず飛び出し、テントから一・五キロほど離れた地点で次々と発見されたのである。その死体はさらに奇妙だった。衣服を失った者、やけどした者、舌がなくなっていた者、頭蓋骨が砕かれていた者、衣服から多量の放射能が検出された者――。
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