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駒野友一が今治で脱いだ2つの殻。
チームの「怒り役」と、料理男子。
text by
石倉利英Toshihide Ishikura
photograph byToshihide Ishikura
posted2019/06/15 11:00
本拠地のピッチを前に笑顔で撮影に応じてくれた駒野友一。37歳、今治の地で今もなお健在だ。
「厳しいですね、これじゃ」
1週間後の5月12日には、駒野はベンチ外だったものの、天皇杯の愛媛県代表決定戦で格下の松山大学に0-1で敗戦。ホームの『ありがとうサービス.夢スタジアム』で1回戦が行われる本大会への出場を逃した。さらに1週間後の5月19日、ホームに最下位の松江シティFCを迎えたJFL第8節も、低調な内容で0-0の引き分け。
試合後、駒野は辛らつなコメントを残している。
「厳しいですね、これじゃ。まだ気持ちで甘えている部分があると思います。大丈夫、昇格できるだろうという気持ちの選手が、まだ何人かいるから、こういうサッカーをしてしまっている。このままじゃ絶対に昇格できないです」
この時点でFC今治は8位に後退。思うに任せない状況に、駒野は強い危機感を抱いていた。
駒野が初めて「怒り役」になった。
出場できなかった天皇杯1回戦を挟み、JFLが再開するのを前に、駒野は行動に出る。第9節の2日前、5月31日。小野監督の了承を得た上でチームメイトに呼び掛け、選手だけのミーティングを開いた。
「気の緩みをもう一度、引き締めなければいけないと思ったので、自分から声を掛けました。チーム立ち上げのときはポジション争いをしていたけど、開幕後はスタメン、メンバー外と立場が分かれています。その状況で、スタメンは練習を『これくらいでいい』という気持ちでやっていないか。
メンバー外の選手は、スタメンを脅かそうという気持ちが薄れていないか。マンネリ化しているんじゃないか、と言いました。もう一度チームとして、同じ方向を向いて戦おう、と」
これまでのキャリアで周囲には、自らのプレーで、背中で、影響力を示してきた。
「過去にプレーしたクラブでは周りに『怒り役』がいたので、選手だけのミーティングを呼び掛けるようなことは、初めてやりました。いざ殻を破ろうというとき、自分にも少し抵抗はありましたけど、チームのために必要なことを言う選手がいなければいけない。
FC今治は去年、勝つことがどれだけ難しいかを知ったはずです。勝つためには、一人ひとりが意識を高く持ち、他の選手もそれを見て、負けられないという気持ちでやる必要がある。そうすればチーム力も上がっていくと思います」