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駒野友一が今治で脱いだ2つの殻。
チームの「怒り役」と、料理男子。
text by
石倉利英Toshihide Ishikura
photograph byToshihide Ishikura
posted2019/06/15 11:00
本拠地のピッチを前に笑顔で撮影に応じてくれた駒野友一。37歳、今治の地で今もなお健在だ。
岡田武史からかかってきた電話。
部屋を借りての1人暮らし。自分で練習着を洗うのも、食事を作るのも十数年ぶりだが、「なかなか新鮮ですよ。特に料理は自分で作ると、のめり込みますね」と笑う。37歳で迎えたキャリアの新たな挑戦を、ピッチ内外で楽しんでいる。
昨年11月、福岡から契約更新の意思がないことを告げられると、続けて3人から電話がかかってきた。
「契約を更新しないと告げられた翌日に、小野剛さんから『来年、一緒にやらないか』と電話がありました。次に木村孝洋さんから電話があり、同じことを言われて。最後に岡田武史さんからも電話があって、『J3昇格の力になってほしい』と言われました」
昨季までFC今治で育成年代を担当し、今季から監督を務める小野氏は、駒野が広島ユースに所属していたときのユースダイレクターで、広島のトップチームや、U-20、U-21日本代表でも指導を受けた間柄。
FC今治のトップチームグループ・グループ長の木村氏は、広島ユース時代の監督で、トップチームでもコーチ・監督を務めた。FC今治の代表取締役会長の岡田氏は、言わずと知れた元日本代表監督。3人の歴代指導者から、熱心に誘われた。
妻からも受けたアドバイス。
Jリーグのクラブでプレーを続けたい思いはあったものの、自分で決めた期限までにオファーは届かなかった。
「電話をいただいた3人は、これまで指導を受けた方々ですし、嫁さんにも『恩返しのために、一緒にやるのがいいんじゃない?』と言われました。それまでFC今治やJFLのことは知りませんでしたが、電話をもらってから調べて、JFLからJ3、J2と階段を上っていくことにも魅力を感じたので、年内にはFC今治に行くことを決めました」
Jリーグ通算出場数は500試合以上、早くから年代別代表に選ばれ、ワールドカップも2大会に出場。FC今治はもちろん、JFL全体を見渡しても群を抜く実績の持ち主の加入に、小野氏は多くの点で期待を寄せている。
「FC今治はアマチュアから四国リーグ、JFLと上がってきたクラブ。駒野のようなプロフェッショナルの生きざまを、若い選手たちが見ながら育っていけることが、クラブの良い文化になっていくと思いました。
自分もこれまでの経験を踏まえて、いろいろと選手に言いますが、監督という立場だと、どうしても上から目線のようになってしまう。ロールモデルの選手がいるのは、特に若い選手には重要で、ああいう選手になりたいと、背中を見て育ってほしいと思っています」