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ドイツ5季目を終えた原口元気が語る。
キャリアの夢、日本代表、長谷部さん。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2019/06/13 12:00
激動のシーズンを終えた原口元気。来季に向けたモチベーションはすでに高い。
35歳でリベロも「なくはない(笑)」
先輩と同じような道を歩いている? 少し意地悪な質問をすると、はにかんだ笑みを浮かべてこう答えた。
「なくはないよね。35歳でリベロをやっている可能性も、なくはない(笑)。いろいろな可能性があるから。それは、この1年を見てもそう。ただ、僕は元々長谷部さんのようなキャリアを歩みたいとは思っていなかった、長谷部さんはブンデスリーガで優勝したり、ポカールを獲ったりして素晴らしいキャリアを刻んでいるけど、僕はどちらかというとアタッカーの(香川)真司くんや(本田)圭佑くんが辿ったような未来を思い描いていた。
でも長谷部さんはどの監督でも、どのクラブでも起用されて、今も信頼され続けている。スペシャルな能力のある選手ではないけれど、ピッチ内でもピッチ外でも頭脳明晰でチームをまとめられる。僕は代表で一緒に活動してきて、そんな彼の能力を垣間見てきた。35歳になってもあのパフォーマンスを続けられるのは尊敬すべきこと。
もしかしたら、彼のようなキャリアは今の僕の目標とするところなのかもしれないと思うようになった」
長谷部を見て学んだこと。
日本にいるときには破天荒と称された少年が、幾多の試練を経てこの世界の処世術を得た。青年へと成長した道のりの裏には、彼自身のたゆまぬ努力があった。
「自分が海外の環境に合っているかどうかはわからない。でも順応しやすい性格だとは思う。ここでは『お前、日本人じゃないだろう?』と言われる。自分が日本人らしく見られないのは、プロサッカーの世界では良いことなのかもしれない。
でも長谷部さんを見たら、その振る舞いは環境によって変えているように思うんだよね。代表とフランクフルトではまったく違う。1つのジェスチャーを見ても全然激しさが違う。長谷部さんはあえて、置かれた環境によって周囲との接し方を変えているように思える。物事に適応する、馴染むには自分自身が変わらなきゃいけないし、自分もそれをしてきたつもり。
これからヨーロッパでプレーしたいと思う選手たちは、ちょっとしたことでも周囲から見られていることを理解したほうがいい。言葉がパーフェクトではないぶん、監督はすごく見ているし、チームメイトもどんな奴かを観察している。自分もその振る舞いは気にしてきたし、ゲームや練習になったらより素を開放して自己を表現してきた。
信頼を得るにはピッチ内でのプレーもそうだけど、練習や普段の振る舞い、いろいろなことの積み重ねが必要だから」