サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
トゥーロン決勝進出、旗手怜央の志。
PK戦5人目を“蹴らせろ”の視線。
posted2019/06/13 16:30
text by
林遼平Ryohei Hayashi
photograph by
MEXSPORT/AFLO
1人目、2人目の名前が呼ばれる。そこに自分の名前はない。3人目、4人目が呼ばれる。そこにも名前はなかった。
残すはあと1人。誰を選ぶのか考えた横内昭展監督代行は、そこで1つの視線に気づくことになる。
「すごくオレを見ていて『蹴るのか』と聞いたら『蹴りたいです』と。『自信あるから蹴ります』と言ったんです」(横内監督代行)
フランス南部の都市、マルセイユ郊外で行われているトゥーロン国際大会。日本は初の決勝進出をかけて準決勝でメキシコと対戦した。常にリードを許す難しい展開の中で、日本は2度追いつき、90分を終えて2-2で後半終了。大会規定により延長戦は行わず、勝敗はPK戦に委ねられることとなった。
PKをあまり蹴らなくても自信が。
そこで最後のキッカーとしてPKスポットに立ったのが順天堂大の旗手怜央だった。
「ちょっと見ていたくらいです。呼ばれないかなって」と笑顔を見せる男は、当時の状況を回想する。
「横さん(横内監督代行)は4人目までしか言わなかった。それで5人目、誰になるのかなと思ったんですけど、なんとなく自分が呼ばれるだろうなと思っていた。それで横さんの顔を見ていたら『レオ』と言ってくれた。自分の中で準備はできていました」
PK戦はメキシコが1本外したのに対して、日本は4人全員が成功。最後のキッカーとなった旗手が決めれば、勝利を決定づけられるところまで来ていた。前日のトレーニングでPKを外していた旗手からすれば、不安に襲われても不思議ではない場面。それでも自分の中には絶対的な自信があった。
「自分が決めれば勝ちという場面のPKはあまり蹴ったことがなかった。でも、PKは自分が覚えている限りほとんど外したことがない。だから自信はありました」