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江崎グリコさんに聞く
「おいしく食べて腹凹って可能ですか?」

posted2019/06/21 11:00

 
江崎グリコさんに聞く「おいしく食べて腹凹って可能ですか?」<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto

取材に応じてくれたのは、江崎グリコ(株) 健康事業・新規事業マーケティング部 部長 木村幸生さん。「ゴールインマーク」に象徴されるように同社とスポーツの関わりは深い。ちなみに、マークの2代目のモデルの一人が、金栗四三。現在のマークは創業時から数えて7代目だとか。

text by

小堀隆司

小堀隆司Takashi Kohori

PROFILE

photograph by

Shigeki Yamamoto

身体に優しくて、しかも美味しい。そんな商品を次々と生み出している江崎グリコには、健康な体づくりへの並々ならぬこだわりがあるようです。

 はたして、甘いお菓子は健康に寄与するのだろうか――。そんな疑問を単刀直入に訊ねると、江崎グリコの木村幸生さんは困った様子も見せず、むしろ我が意を得たりと言った表情で話し始めた。

「そもそもグリコの社名はグリコーゲンから取られているんです。創業者の江崎利一が牡蠣の煮汁を捨てる漁師たちの姿を目にして、牡蠣にはエネルギー代謝に有効なグリコーゲンが多く含まれていることを思い出した。この素材を子供たちの健康作りに生かせないかと考えたのが起業の始まり。よく栄養と運動と休息が健康の三大要素と言われますけど、私たち食品メーカーはその栄養の部分で健康に寄与したい。きっとできるんじゃないかと考えています」

 創業者は薬種業を営んでいたそうだが、より多くの人の手に取ってもらいたいとグリコーゲンを薬ではなくキャラメルに練り込んだ。大正11年に発売され、現在もスーパーのお菓子売り場などで売られている「グリコ」の赤いパッケージをよく見ると、原材料の表示欄には確かにかきエキスの文字を見つけることができる。「おいしさと健康」を企業理念に掲げるグリコにとって、健康を科学することはごく当たり前のことなのかもしれない。

転機となったアーモンドとの出会い。

 グリコにとってグリコーゲンが生みの親だとすれば、その後に生み出された商品にはどんな特徴があるのか。木村さんによると、創業者がもうひとつ強いこだわりを見せた食材がアーモンドだという。

「江崎がアメリカ産業視察団の一員として渡米した際、ナッツ専門店で出会ったのがアーモンドでした。当時はまだ高価で、漢方薬の材料としてごく一部が輸入されていたくらい。でも食べると美味しいし、ビタミンEと食物繊維とオレイン酸が一度に取れる。この可能性の塊のような食材を加えることで、『1粒で2度美味しい』アーモンドグリコが誕生したんです」

 一口目は牛乳のエキス(タンパク質)であるホエーの甘い味覚が楽しめるが、次に噛むとアーモンドの香ばしさが中からあふれ出してくる。久しぶりに口にしてみたが、1粒で2度美味しいとはじつによく考えられたキャッチフレーズだと実感した。

 アーモンドと出会い、グリコはその後20年以上をかけて製品化に成功。今やアーモンドを取り入れたお菓子の多くがグリコの看板商品となっている。

「キャラメルの次がチョコレートで、一粒のアーモンドを丸々入れたのもグリコが初めてでした。今では『アーモンド効果』なんて健康ドリンクを出しています。この商品はアーモンドを皮ごと凍結粉砕することで栄養素を逃さず配合。甘い飲み口ですけど、糖質が少ないロカボ食の基準を満たしてます。長年研究を続けてきて、グリコ独自のアーモンドの美味しさを商品化させてきたという自負はあります」

 食べて美味しいのはもちろん、栄養面での効果も期待できる。近年の健康ブームを背景にお菓子も進化しているのだろう。

【次ページ】 健康な体作りに必要な「食べる楽しさ」。

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