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CL優勝で「クロップ帝国」時代誕生。
リバプールは成長の余地が大きすぎ。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byUniphoto Press

posted2019/06/10 10:30

CL優勝で「クロップ帝国」時代誕生。リバプールは成長の余地が大きすぎ。<Number Web> photograph by Uniphoto Press

CL制覇後、リバプールの地に戻ってご機嫌のクロップ監督。リバプールは来シーズン以降も成長を遂げていきそうだ。

ファンダイク、ヘンダーソンの貢献。

 最終ラインの要となったビルヒル・ファンダイクは、補強成功の象徴だ。今季プレミアで20チーム中最少となる22失点、CLでもトッテナムにゴールを許さなかった守備面の向上は、リバプールで初のフルシーズンを戦ったファンダイクによるところが大きい。

 1人の加入がチームに「王者」としての風格をもたらす。それは'90年代のマンチェスター・ユナイテッドで「ファーガソン帝国」誕生のきっかけとなった、エリック・カントナの加入にも匹敵する。

 7500万ポンド(110億円弱)の移籍金は決して安くはない。だが、強さと速さを兼備する守備能力、正確なロングパスを放つ技術、そして最終ラインにとどまらないリーダーシップと、その価値は十二分にある。

 マドリードでの栄光の一夜で、チームの先頭に立って優勝トロフィーを掲げたのは、リーダーのジョーダン・ヘンダーソン。在籍8年目のMFは、指揮官と選手の間に存在する固い絆を示す好例と言える。

 クラブの英雄ジェラードから主将のバトンを受け継いでから、メディアでは何かと至らなさが指摘されてきた。だからこそ「2019年のCL優勝キャプテン。満ち足りた気分にさせられるよ」との優勝直後のクロップ談は、強い愛情と誇りが感じられる。

本調子でなくても勝てる強さ。

 決勝の内容について、トッテナムから奪った完封勝利は「凡戦」との意見もある。確かに、準決勝でバルセロナ相手に合計スコア4-3で逆転勝利したファイナリストにしては、地味な勝利だった。

 だが本当に強いチームとは、本調子ではない試合でも勝利を収められるもの。クロップ体制4年目のリバプールは、それをCL決勝という究極の大一番でやってのけたのである。

 ポゼッションも得意とするはずのチームが、相手を大きく下回る39%のボール支配率。だが今季は、リーグ戦でもトッテナム相手に2戦2勝と結果を残している。

 リバプールは主導権を握ったまま勝利を奪うこともできれば、見た目には劣勢でもカウンターから狙い通りに結果を手に入れることもできる。つまり、クロップのリバプールは果敢に攻め勝つこともできれば、無難に逃げ切ることもできるチームへ進化を遂げたわけだ。

【次ページ】 各ポジションに伸びしろがある。

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