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佐々木朗希、だけじゃない東北投手。
仙台大・宇田川優希はまるで“野茂”。 

text by

安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph bySendai University

posted2019/05/22 08:00

佐々木朗希、だけじゃない東北投手。仙台大・宇田川優希はまるで“野茂”。<Number Web> photograph by Sendai University

仙台大・宇田川優希。野茂英雄を想起させるような剛腕が東北の地に現れた。

「グシャーン!」という不気味な音。

 普通の硬球を投げている音じゃない。

 どんなスピードボールでも、受けたミットの革でボールが止められているうちは、「パーン!」とか、乾いた音がするものだ。

 しかし宇田川優希の捕球音は、“パーン!”でも、“バーン!”でも、ドーンでもない。

 強いていえば、「グシャーン!」。なんとも不気味な音をたてる。

 ボールがミットにめり込んでいる音だ。この音はダメだ。この音は、捕手の手のひらと親指側3本を粉砕する音だ。

「はい、ストレート、続けて5球は無理です、手が死にます」

 そうだろう、そうだろう。

 学生時代、よく似た剛球を受ける係だった私には、ミットどころか、手のひらの骨にめり込むようなその破壊力、辛い記憶の中の実感として、今もはっきりよみがえる。

 加えて、この角度はなんだ。

 両足が円筒形の“柱”みたいな、ガッシリたくましい体格。だから、右腕をちょっとかついで、押して投げるようなフォームを想像していたら、ぜんぜん逆だ。引っぱり過ぎないテークバックから、ボールを握った右手がスッと高い位置を取り、時計の文字盤でいえば“11時”ぐらいの位置から存分に腕を振り下ろすから、右打者の外角低目にきまる角度がすごい。

 あの角度なら、右打者の外角低目、左打者の内角低目……どちらも打者の目からすれば、ボールの高さがわからない。振っても空振り、せいぜいファールにしかならない「必殺兵器」だ。

フォークの軌道はまるで千賀。

 さらに、フォークの落差がすばらしい。

 2月のソフトバンクのキャンプで見た千賀滉大投手の「スーパーフォーク」。あのボールぐらいしか、比較の対象が思い浮かばない。

 あの剛球の角度と、このフォークの落差。

 こんなピッチャー、前にいたよな……誰かに似ている……。

 タテのスライダーが、速球と同じ球道から地面に突き刺さる。

 体を張って、懸命に前に止めようとする捕手。

 このチームのレギュラーマスクを獲得しようとするのなら、この剛腕の速球の破壊力に耐える我慢強さと、2種類の高速変化を受け止める技量……こりゃあ、骨の折れる仕事だ。

【次ページ】 監督も思わず「打てんわ……」

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