草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
“アライバ”のDNAを継ぐ25歳。
与田監督が光らせる溝脇隼人の才。
posted2019/05/23 08:00
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
Kyodo News
19勝24敗の5位。与田剛監督を迎えたドラゴンズの成績(5月21日時点)をどう判断するかは人それぞれだろうが、おおむねファンの声は好意的のようだ。というのも昨シーズンと比較して、あまりにも戦力ダウンが著しい中での戦績だからである。
戦いが始まる前から、低下は始まっていた。チームでただ1人規定投球イニングをクリアし、勝ち頭(13勝9敗)でもあったオネルキ・ガルシアが阪神に流出し、2番手の松坂大輔(6勝4敗)、小笠原慎之介(5勝6敗)、藤嶋健人(3勝1敗)が故障、リハビリで投げられない。計27勝が消えた状態で開幕を迎えた。
離脱の連鎖はシーズンが始まっても歯止めがかからず、開幕投手を任せた笠原祥太郎が不整脈、攻守にチームの軸である平田良介も肉離れに見舞われた。病気もケガも野球にはつきものといってしまえばそれまでだが、少なくともベンチワークの範囲で防げたものではない。
そう考えたとき、借金5ならまずまずじゃないかというのがファンの見方である。
不遇だった選手を生かす与田監督。
他球団より薄い戦力層で、どう戦っているのか。それを象徴するのが阿知羅拓馬、加藤匠馬、三ツ俣大樹、溝脇隼人、井領雅貴、渡辺勝、伊藤康祐、友永翔太の「与田チルドレン」だろう。この8人には昨シーズンの一軍戦に不出場という共通点がある。大きな故障で長期にわたって出られなかったわけではなく、高卒ルーキーだった伊藤を除けば言葉は悪いが「落ちこぼれ軍団」のようなものだ。
しかし、今シーズンはすでに8人とも一軍の試合に出場し、阿知羅はプロ初勝利を挙げ、加藤は開幕マスクから正捕手への歩みを進めている。井領は代打で起死回生の同点打を放ったし、伊藤は初安打と好守でチームに勝利をもたらした。
この8人以外にも過去の実績はあるが、登板しては1日限りの登録抹消を繰り返し、ついに未勝利に終わった大野雄大が、完封を含む3勝を挙げ、高卒2年目の清水達也は2戦2勝、昨シーズン2試合しか出なかった遠藤一星も平田離脱後はライトの先発チャンスを与えられている。いわば「与田再生工場」。しかも、他社ではなく自社内で不要とされかけていた人材を見事に活用していることになる。