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アルバルクが「逆転優勝」できた理由。
“賢人”ルカHCの自由な発想と奇策。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2019/05/20 08:00
ファイナルの40分を掌握し、アルバルクの優勝を導いたルカ・パヴィチェヴィッチHC。
セミファイナルの3戦目を練習として使う。
連覇のプロセスを振り返った時に、ポイントとなったのはセミファイナルの琉球戦だった。どんな状況に追い込まれてもそれを「栄養」に変える発想がルカにはある。
琉球とのチャンピオンシップ・セミファイナルは、第3戦に持ち込まれた。しかも、相手ホーム。地力では東京に分があると思われたが、琉球には熱烈なサポーターがついている。何が起こるか分からない。
しかし、ルカはこれを連覇へ向けて必要な試練と捉えた。ルカはこう語った。
「第3戦にもつれ込んだのには、プラス面とマイナス面がありました。マイナス面は貴重な休養が短くなってしまうことです。ただし、千葉との決勝を見越した場合、タフな琉球との第3戦は『ザ・ベスト・ポッシブル・プラクティス・セッション』、考え得る最高の練習セッションになると思いました」
この発想には、感嘆した。
負ければシーズンが終わるという試合を、優勝に向けての最高の準備が出来るとルカは考えたのだ。当然、ルカの発想は選手、スタッフへと伝播する。
ポジティブシンキングが田中を蘇らせた。
それだけではない。ケガから復帰して日が浅い田中にとっても、最高のリハビリになった。
「田中がネクストステップに到達するためには、この試合が最高の準備機会になると思いました。それは今日の田中のパフォーマンスが証明していると思います」
この日、田中はチームトップとなる16点、しかも3ポイントシュートは5分の3の確率で、シューターとして錆を完全に落とすことに成功していた。
田中のパフォーマンスの背景には、ルカのポジティブ・シンキングがあったことは間違いない。