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アルバルクが「逆転優勝」できた理由。
“賢人”ルカHCの自由な発想と奇策。
posted2019/05/20 08:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
AFLO
スポーツの書き手が年齢を重ねると、選手との年齢差は開くばかりだ。これに抗う術はない。
ただし、監督やコーチは一緒に年齢を重ねていくので、お互いの成長を確認し合うことができる。
指導者への取材は楽しい。
特に、私の場合はエディー・ジョーンズというラグビーの世界では有数の弁舌家の取材をし、それを本にまとめたことで、仕事の新境地を開くことが出来た。
そしていま、気になる指導者がいる。
Bリーグで連覇を達成したアルバルク東京のルカ・パヴィチェヴィッチだ。
ルカは1968年、モンテネグロ生まれの50歳。2003年まではヨーロッパ各国でプレーし、引退してからセルビアA1リーグでコーチングのキャリアをスタートさせ、成功を収める。2012年から2014年までは母国モンテネグロ代表の監督も務め、2016年に日本バスケットボール協会技術委員会アドバイザーとして来日。
当時、混迷していた代表の暫定ヘッドコーチなども務め、2017年6月にアルバルク東京のヘッドコーチに就任した。
高速展開も、ハーフコートも強い千葉。
「ルカ」は賢人だ。
千葉ジェッツを破った後の記者会見だけでも、彼の賢さ、そして勝負師としての顔が垣間見えた。
今季、東京は千葉に対して天皇杯の結果を含めると1勝6敗と大きく負け越していた。何か手を打たなければいけない。試合前、ルカの千葉に対する分析はこのようなものだった。
「千葉とはこの2シーズンで、もう15、16試合戦っていて、お互い手の内を知り尽くしています。とにかくプレーが速く、ゲームの序盤から相手にインパクトを与えて主導権を握るのが彼らのスタイルです。これに対抗するにはポイントガードの富樫を自由にさせないことが鍵になります。
ところが、ゆっくりとしたハーフコート・オフェンスも、ギャビン・エドワーズを中心にパワーゲームを仕掛けてきます。我々としては、しっかりとボックスアウトをして、彼らにセカンドチャンスのポイントを与えないことが重要でした」