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アメリカ時代のコーチが感心した、
富樫勇樹のリーダーとしての成熟。
posted2019/05/19 11:45
text by
永塚和志Kaz Nagatsuka
photograph by
Kiichi Matsumoto
普段はクールな男が、吠えた。
“Let's go!”
5月11日に行われた、アルバルク東京と千葉ジェッツのBリーグファイナル。試合時間残り5分からジェッツの富樫勇樹が乾坤一擲の3ポイントシュートを2本連続でねじ込み、一時は19点あった差を5点まで挽回した。
おそらく、横浜アリーナが最もボルテージが上がった瞬間だった。
試合終了間際にも富樫は再度、2点差に迫る大きな3ポイントを決めた。が、ジェッツは一歩及ばず。去年の再戦となった優勝決定戦で、再び後塵を拝した。
千葉とともに描く富樫の成長曲線。
試合終了から数時間後、会場の横浜アリーナ近くのホテルで慰労会が開かれた。勝っていれば祝勝会となるはずだったが、肩を大きく落とす者もいなかった。数時間前に超満員のアリーナを熱狂させた立役者の一人である富樫は「いつもの」クールな彼に戻っていた。
「すごい悔しいというのはあるんですけど、今年に関してはこのチームが、正直、このリーグでベストだと胸を張って言えるチームが作れたと思っています」
試合直後の記者会見では再び敗戦した悔しさから「感情的になった」と話した富樫だが、この時は落ち着いた、まっすぐな口ぶりだった。
Bリーグ初年度は44勝、昨季は46勝、そして3年目の今季はリーグ最高勝率となる52勝とジェッツは着実に実力を上げてきた。その成長曲線は富樫のそれと重なっていると言えよう。
司令塔のポイントガードとして、ただスピードのあるプレーをする選手だというだけではなく、名実ともにチームの中心となった。そのことは、数年ぶりに目の前で彼のプレーを見ることとなった元コーチも実感していた。