欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
悪夢再び、CL大逆転負けのバルサ。
「偶然」とは言えない敗因を探る。
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byUniphoto Press
posted2019/05/15 11:45
メッシの力で相手をねじ伏せている時はいい。しかしそれができない時のバルサは、あまりに脆い。
メッシが決めるか、決めないか。
ボールを握る手間を惜しみ、縦への速さばかり追求するようになっては、もはやバルサではない。
それでも、前線にはチャンスを高い確率で決めてくれるリオネル・メッシという異星人がいるから、すっかり彼らは安易な道から逃れられなくなってしまったのだ。メッシに預けさえすれば、あとは何とかしてくれる。そう、レーンに皿さえ並べておけば、あとは勝手に客が平らげてくれるように。
こうして年々メッシへの依存度を深めたバルサは、この大黒柱がゴールを決めれば勝ち、決められなければ苦戦する、そんな実に分かりやすいチームになってしまった。
2014-15シーズン、「MSN」と呼ばれたメッシ、ルイス・スアレス、ネイマールのタレント力を背景にCL制覇を成し遂げたチームから17年夏に「N」が抜け、メッシにかかる負担はさらに大きくなっただろう。
ネイマール退団の穴を、彼と入れ替わるようにしてバルサにやって来たバルベルデ監督は、フィジカルやパワーで埋めようとした。いわゆる労働者タイプのパウリーニョ(現・広州恒大)やアルトゥーロ・ビダルの重用は、それが時流に即した変化であったとしても、バルサらしさを削り取るひとつの要因になっている。
アルトゥールとビダルの起用法。
リバプールとの2試合も、メッシが決めれば勝ち、決められなければ苦戦する典型的なひとつの例に過ぎない。3-0で勝利したカンプノウでの第1レグにしても、試合内容で圧倒したわけでは決してなかった。
今のバルサには、玉砕覚悟で力押しに押してくるチームを、流れるようなパスワークでいなす技術も余裕もない。国内リーグならともかく、リバプールのような強豪クラブが相手では、その勢いに見るも無残に飲み込まれ、プレスの餌食になってしまうのだ。
リバプール戦でバルベルデ監督は、ホームでもアウェイでも、中盤の一角に“シャビの後継者”と呼ばれるアルトゥールではなく、肉体派のビダルをスタメンで起用した。
確かにビダルは誰よりも走り、誰よりもよく戦ったが、しかしそれは、バルサがこれまで是としてきた選択だっただろうか。
結果論に過ぎないのかもしれないが、アンフィールドではアルトゥールを先発させてまずはパス回しでリバプールの気勢を削ぎ、終盤にビダルを守備のジョーカーとして途中投入すべきではなかったか。相手がモハメド・サラー、ロベルト・フィルミーノの飛車角落ちなら、なおさらそう思えた。